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[ ハードボイルド ]
追いつめる
志田司郎
生島治郎 出版月: 1967年01月 平均: 8.00点 書評数: 4件

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光文社
1967年01月

中央公論社
1972年01月

中央公論社
1974年01月

講談社
1976年01月

光文社
1988年08月

集英社
1990年03月

KADOKAWA
1994年09月

徳間書店
2000年04月

No.4 8点 斎藤警部 2024/05/07 23:04
警察小説と私立探偵小説のハイブリッド。 直接心描がむしろ推進力となった、日本式湿潤ハードボイルド。 舞台は神戸と大阪。 或る事件の容疑者を追う渦中で信頼する同僚を誤射、ほぼ廃人にしてしまい、そこから更に経緯あって辞職した元刑事が、同僚への償いきれない償いの重荷を背負い、件の容疑者を含むより大きな犯罪組織を相手に立ち向かう。 元上司、と呼ぶのも憚られるお偉方の県警本部長が強い味方。 二人の繋がりにはまた深い機微や事情があるわけですが。。

「こうなったら、誰でもかめへん。気にくわんやつはみな殺しや」

時々、ストーリーに油を差し過ぎたか、展開が簡単に行き過ぎて鼻白みかける所もあったけど、全体で見たらそれも方便と言うもの。
震えの来るような入院病室のシーンに黙り込み、ノンケの男三人がラブホテルの一室に集合してしまうコミカルなシーンに笑いを堪える。

さて本作に於ける社会派要素は一見お飾りのようでその実、密度の濃い中核となるちょっと危ない部分なのではないか。 いずれにせよこの結末の、唐突なようでいてそうでもない、読者を振り切って置き去りにするが如くの大反転は、熱かったですね。。 
まあ考えたら「世の中そんなもんだったっしょう」てなもんではありますが、やはりあのハードボイルド・ミステリらしい『反転中締め』二つと、その後の手に汗握るクライマックス・シーンとが見事な目眩しとして、ミステリ的有終の美に貢献すべくしっかり機能したのだと思います。 連城スピリットさえ少しばかり漂いました。

“私は扉を閉めた。棺桶の蓋を閉めるときと同じ響きがした。棺桶の中には二つの屍体と、私を追いかけつづけてきた罪の意識が閉じ込められたのだ。”

No.3 7点 kanamori 2010/07/31 14:33
同じく港町を舞台にしたデビュー作「傷痕の街」の延長線に位置づけされるハードボイルドの傑作。
誤って同僚を撃ち警察を辞した元刑事の一人称で、無駄を排した抒情的な文体で主人公の心情を綴りながら、組織暴力団に立ち向かう様を描いています。
海外の私立探偵ものは、主人公を傍観者的に置いたものが多いが、本書の主人公は意外とウエットで泥臭い。日本独自のハードボイルド小説という感じを受けた。

No.2 8点 2010/07/18 19:40
最初の1ページから、まだ何も事件は起こっていないにもかかわらず、もうハードボイルド、それも正統派以外の何物でもないという感じが伝わってくる文章です。当然のように主役志田の一人称形式ですが、ハメットともチャンドラーとも微妙に違う雰囲気があり、そこが個性というものでしょう。
全国港湾協会を牛耳る広域暴力団の捜査を始めた刑事が個人プレーの行きすぎで結局退職を余儀なくされ、それでも県警本部長の了解の下、しつこくに迫っていく話は、彼の執念と哀しみが伝わってきます。
最後の「意外性」はいかにもハードボイルドらしいのですが、途中であからさまな手がかりもあり、読者は志田より先に単なる直感ではなく気づいてしまうでしょうね。船に潜入した志田が見つかってどうなるかの経緯は、暴力団にしては処置が甘すぎる点がちょっと気になりました。

No.1 9点 itokin 2010/02/10 20:50
日本のハードボイルドの原点といわれている作品。今読んでもぜんぜん色あせてない派手ではない全編を流れるムードはなんともいえない余韻が残る。大沢作品の好きな人に読んでもらいたい直木賞受賞作品です。


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生島治郎
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