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[ 本格 ]
毒蛇の秘密
レオ・カリング
S・A・ドゥーセ 出版月: 不明 平均: 3.00点 書評数: 1件

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No.1 3点 おっさん 2026/09/03 17:57
私立探偵レオ・カリングの、今回の依頼人は、有名な探検家ビクトル・バンク。密室状態の自宅アパートに、以前、南洋で関係のあった女――入水自殺したはずのローザ――の幽霊が出没するというのだ。「私」こと、新聞記者のトルネと調査を開始する間もなく、バンクは自宅で瀕死の状態で発見される。蛇の毒が原因で、その手首には、蛇使いだったローザの、コブラ型の腕輪が巻き付いていた!
バンクは、かろうじて命をとりとめるが、このままでは、復讐に狂い自己抹殺まで遂げた女の追撃を防げないと判断したカリングは、世間の手前、バンクが死んだことにしてしまう。「ねえ、トルネ君。きみは明日の朝刊新聞に、有名な探検家ビクトル・バンク氏が毒蛇の実験中に誤って負傷し、生命が危篤であるということを書き、夕刊にバンク氏が、とうとう死んだと書いてくれたまえ」。そしてなんと医師に死亡診断書を書かせ、埋葬の手続きまでしてしまう!!
そして極めつけ、身を隠させるバンクには遺言状を書かせ、「さしあたり、ぼくを相続人としてください。そしてあなたが再び世に出なさった時は、むろんそっくりお返しすることにいたします」と、のたまうカリング!!!

おいおいおいおい、駄目だろ、そりゃ。もともと、自身の信じる正義と真実のためなら、手段を選ばぬ独善的なキャラではあったのですが、さすがにこれはやり過ぎ。およそ説得力が無い。
このあとの展開には、トルネの友人夫妻を巡る不倫スキャンダルが絡まり、一見、コブラの事件とで二つに割れているようなストーリーがやがて結びつき、企みに満ちた仮面舞踏会の夜を経て、邪悪な犯人の遠大な計画(のちにエラリー・クイーンがこだわっていく趣向の、萌芽といえなくもない)が浮かび上がっていくのですが……。

2024年に、中公文庫が『スミルノ博士の日記』(宇野利泰訳)を復刊したのは驚きでしたが――「これが面白い!」「なんか読みたいときはこれ!」云々と煽りコピーを刷り込んだ特装カバーまで用意した、版元の熱意も凄かった――その後、ネットから窺える、読了した諸氏の反応がおおむね好意的なのも、じつは驚きでした。その昔、本サイトのレヴュー(初投稿!)で「残念ながら解決の仕方が下手。後半のストーリーがグダグダ」とか、「マニアなら押さえておきたいタイトルですが、復刊が望まれる、とまでは言えないのが辛いところ」なんて書いて、評点5で片付けた身としては、不明を恥じる次第です(と言いつつ、作品に対する筆者の基本的なスタンスに変化は無かったりするのですが、それでも、いまだったら……スウェーデン語の原著とドイツ語版に基づく訳文を比較検討した「編集部注記」と、要を得た戸川安宣氏の「解説」を加味して、中公文庫版「スミルノ博士」には7点を付けていたかな)。
さて。
そんな「スミルノ博士」リバイバルの副産物のように、2025年に少部数出版のヒラヤマ探偵文庫から、エス・ア・ドゥーゼ作、小酒井不木・平山雄一共訳『毒蛇の秘密』(原作は、作者の第六長編 Cobra-mysteriet 1919)がリリースされました。
本書は、昭和2(1927)年に小酒井不木が、同人雑誌『大衆文芸』に連載(ドイツ語訳からの重訳)するも、同誌の休刊のため第12章までで中絶した幻の作品の、残り部分、最終第21章までを、今回の共訳者が訳し継ぎ(Kindleを使っての、スウェーデン語→英語→日本語という重訳で)完成させた、企画ものです。不木の訳文の原作との異動を、巻末の訳注一覧で明示しているのは、中公文庫版「スミルノ博士」を範にしたのでしょう。有難い資料になっています。
資料、うん、でもこの本の価値は、つまるところ……それに尽きるかな。作品の出来自体は、前述のように、安直なスリラーと紙一重ですし。
正直いって、後半パートの翻訳に関しては、言いたいことが山のようにあるのですが、ともかくよく出してくれた、最後まで日本語で読めるようにしてくれて有難う平山さん! で目をつぶってもいい。
しかし、訳者と別に、編集担当者名(大正文学研究者の湯浅篤志氏)も記載されているにしては、校正がヒドイ。前半パートでも散見しますが、特に後半の、誤植のチェック、甘すぎです。「てにをは」レベルで目が止まりますし、「二階の部屋の操作」(「二階の部屋の捜査」の誤り)とか、「靴は男物で、その片帆の中には」(「靴は男物で、その片方の中には」の誤り)とか、こういう判じ物が出てくるのは、ちょっと勘弁してほしいですよ。人名表記の中に、小酒井訳と平山訳で不統一のものがある(ローザ・ベルンソンとローザ・バーンソン)のも、特に断り書きがない以上、確信犯、ではないですよね。
年齢を重ねると、視力が厳しくなるのは、よく分かります――などと、知ったかぶりで書くのが平山、湯浅両氏に失礼なのは重々承知していますが、それでも、最後の砦の校正だけでも、外部のプロに委託されては如何? と思わずにはいられません。そうすれば少なくとも、最終ページのカリングの締めのセリフが、かっこ閉じ(」)なしに句点(。)で終わるような凡ミスは避けられますよ、と。
読めるだけで有難い――確かに。でもやっぱり、 ”商品” としての質は大事ですよね。
残念賞、かな。


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S・A・ドゥーセ
1963年01月
スミルノ博士の日記
平均:5.43 / 書評数:7
1954年01月
夜の冒険
平均:5.00 / 書評数:1
不明
毒蛇の秘密
平均:3.00 / 書評数:1
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