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奇妙な殺し屋
地方検事補ジェレミア・X・ギブソン
ハンプトン・ストーン 出版月: 1972年06月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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早川書房
1972年06月

No.1 6点 人並由真 2026/05/27 12:42
(ネタバレなし)
「わたし」ことニューヨークの地方検事補のマックは、同僚(ただし別チーム)の地方検事補ジェレミア・ザビエル・ギブソン(ギビー)から、彼の懐中に怪文書が投げ込まれていたことを聞かされた。その内容は、骨折技で殺人を行なう犯罪者が試験的に他者を傷つけてみたい、といった思いを述懐する主旨の文面だった。当惑するギビーとマックだが、やがてギビーが常用するタクシー運転手で25歳の若者ハーブ・バクスター(ハーバート・クインシー・バクスター)が仕事中に襲われ、殴打されて失神中に手首の骨を折られるという事件が生じた。ハーブの証言から、襲撃者が特徴的なヒゲのある男だと認めたギビーとマックは、先の怪文書との関連を考えて捜査に乗り出す。やがて彼らは某所で不審な人物を見つけた。

 1967年のアメリカ作品。
 シリーズ探偵である地方検事補ジェレミア・X・ギブソンものの長編第15弾。
 シリーズは1948年から開幕のようで、1972年に本書が邦訳されるまで、すでにそれなりに本国では人気と評価を集めていたと思われるが、結局、本シリーズの日本への紹介はこの作品一冊に留まった(ちなみに本書は、ペーパーバックでシリーズ全体がまとめて本国でリプリントされた際に看板作品になった一編だったようだ)。

 作者ハンプトン・ストーンは、旧クライム・クラブでも『警官殺し』の邦訳がある、警察小説、シュミット警視シリーズの著者ジョージ・バグビイの別名。バグビイには密室殺人ものの未訳のパズラー『リング・アラウンド・ザ・マーダー』(1936年)という作品もあり、鮎川哲也の短編『矛盾する足跡』の中で話題にされている。いずれにしろ、日本ではマイナーで不遇な作家だ。

 本作の邦題は「殺し屋」を謳うが、怪文書の内容は殺人の常習性は感じさせるものの、職業的殺人者というニュアンスは薄く、ちょっと邦訳出版のタイトリングにしくじった感もある。
 いずれにしろレギュラー探偵のポケットに怪文書が巻き込まれて開幕する物語の掴みはそれなりの外連味があって、ちょっと面白い。
 殺人らしい殺人はなかなか起きず、前半~中盤の現実的な犯罪は青年タクシードライバーで美人の奧さんサリーがいるハーブの傷害事件のみ。渋いといえば渋い地味な展開だが、怪しい? ヒゲ男のキャラクターがなかなか立っていて、主人公コンビとの関りで結構飽きさせない。

 終盤で明らかになる事件の構造は意外といえば意外で、なるほどとも思う一方、外から犯人の行動の軌跡を考えるとかけた労力のコストが悪かったんじゃないかな、という気分も生じないでもない。まあギリギリか。マンハッタンの中流家庭や、事件の捜査の上で関わってくる図書館のロケーションやタクシー業界、それらもろもろの風俗描写は臨場感があってそれなりに楽しめた。佳作の中くらいか。


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ハンプトン・ストーン
1972年06月
奇妙な殺し屋
平均:6.00 / 書評数:1