海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 短編集(分類不能) ]
四つの犯罪/七つの墓場
つげ義春全集1
つげ義春 出版月: 1993年10月 平均: 7.00点 書評数: 2件

書評を見る | 採点するジャンル投票


筑摩書房
1993年10月

筑摩書房
2009年04月

No.2 7点 レッドキング 2026/04/17 17:47
つげ義春の三大傑作として、「海辺の叙景」「ねじ式」「ゲンセンカン主人」をあげたい。

が、「ほんやら洞のべんさん」等 "旅物"、「義男の青春」等 "青少年物"、「無能の人」等 "漫画家物"、「夢の散歩」等 ”シュール夢物”・・それぞれに捨てがたく・・
真の愛好家ならば、「沼」「チーコ」以前の、つげがもっぱら貸本漫画家として描いていた・・ここに挙げられたような・・"ミステリ物"や"時代劇物"etcにも、同等に愛着を持つのだろうが、自分は、そこまででもないかなぁ(^^;

結局は絶筆となってしまった・・随分と前だが・・「別離」のラスト、
" 冬の淡い日射しをうけて 今にも消え入りそうな自分の影を見て ぼくは涙がとどめもなくこぼれた "
は、身にこたえる・・・

No.1 7点 クリスティ再読 2026/04/17 16:45
この一カ月ばかり、友人と顔を合わせるとつげ義春逝去の話で持ち切りだったね。「ねじ式」などブンガク系の作品で有名だが、実は初期の貸本作家時代はミステリ系の作品が多い人なんだよ。江戸川乱歩リスペクトが作品にも現れているし、また、当時の貸本漫画ではさいとう・たかをなどの関西勢がハードボイルド系の劇画を売り物にしていて、つげの作品にも影響が見られたりする。なので本サイトに登場する資格は、ちゃんとあったりするんだ。

筑摩書房の「つげ義春全集」では1巻目の本書と、2巻目の「腹話術師/ねずみ」にこの頃の「迷路」など貸本アンソロに発表した作品がコレクションされている。
「四つの犯罪」は、百物語方式で温泉宿で出会った相客がそれぞれ探偵譚を話すという趣向で四人四様の犯罪が語られる。「部屋に閉じ込められた男が一階のつもりでドアを開けたら、そっくりに作った高層階の部屋だから、出口から墜死する」という乱歩のお気に入りネタが一発目の犯罪。次いでナイフの片面にだけ毒を塗って切ったリンゴを被害者に渡して毒殺する、というのありがちトリックが2つ目、一人二役変身生活で殺人が起きたような状況を作り出す話が3つ目、4つ目が首なし死体トリック話。まさに乱歩からネタを引っ張ってきたこの連作マンガが、つげ義春の初期では代表作級。

「七つの墓場」は急流が自殺の名所として知られる温泉宿の秘密を巡るホラーミステリ。猟奇性が強いし、探偵と犯人の騙し合いみたいな展開もあり。とくに原作とかなさげだが、辰巳ヨシヒロの作品をパクったという噂があるね。

名作の誉れ高い「おばけ煙突」。ミステリというよりも、千住火力発電所の4本の煙突が角度によっていろいろな本数に見えることから異名がついている。ここを舞台にして、煙突の詰まりを掃除するのに立候補した職人の話。最後にその妻が夫を待つ姿を雨に濡れるガラス越に描いて、この効果が素晴らしい。まあ誰もがこの頃のつげ義春の水の描写は褒めるが、やはり、いい。プロレタリア文学風なんだけども、同趣向で鉄道自殺を扱った「鉄路」も載っている。こっちは大阪圭吉っぽさを感じるな。

飼っている黒猫クロを毛嫌いする引きこもりの長男。それを心配する父が脳溢血で急死するが遺言でそのクロを棺に入れように言い残す。長男は次男の心配をよそにクロを厄介払いのために棺に入れて葬式を出すが...という「クロ」。これがなかなかミステリとしては秀逸。

「四人の素人」は、素人四人で郵便為替運搬を狙った強盗を行う話の顛末。ハードボイルドなノワール。2巻目にはよりハードボイルドに振り切った「親分」や「一発」が収録されているが、日活アクションっぽいなあ(苦笑)

というわけで、つげ義春の初期はまさに「ミステリ漫画」だった。「ねじ式」などのガロ系シュール漫画期、「無能の人」な貧乏漫画期とは別なつげ義春でもある。でもどの作品でも温泉宿が出てくる(笑)


キーワードから探す
つげ義春
1993年10月
四つの犯罪/七つの墓場
平均:7.00 / 書評数:2