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[ ハードボイルド ]
しらみ野郎の死
ウィリアム・レノックス
ジョン・シェファード 出版月: 不明 平均: 6.00点 書評数: 1件

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No.1 6点 クリスティ再読 2026/02/25 18:27
1962年のアメリカ作品,原題「Demise of a Louce」。実は田中潤司氏の紹介によると、作者はブラック・マスクで活躍したが、日本ではロクに紹介されていないW.T.バラードの別名義で、さらにバラード名義で発表された「Say Yes to Murder」を改題したものだそうだ。翻訳は別冊宝石121号「現代ハードボイルド特集」(昭和38年8月15日刊行)でR.S.プラザーの「人みな銃をもつ」との合本。翻訳は永井淳。この雑誌にはそのほかにチャンドラーの「待っている」「ブロンズの扉」を収録している。

主人公のウィリアム(ビル)・レノックスはハリウッドの撮影所に雇われる、プロデューサー直属のトラブルシューターみたいな立場にいる男。売れっ子俳優が撮影に姿を現さないことに怒ったプロデューサーに、行方を探ることを命じられるが、足取りを辿って行き着いたダンサーの部屋で見つけたのは、その俳優の死体だった。部屋主のダンサーは大女優の孫娘であり、大女優ともレノックスは旧知の仲だったこともあり、成り行きでその死体の隠蔽に関わってしまう...しかし、相次いで起きた高級娼婦殺しと、大女優が大量の睡眠薬で死ぬ事件など、事件は広がっていく。

こんな話。だから正確には探偵というわけではないが、プロデューサーに名目的には文芸スタッフみたいに雇われているけども、トラブルシューターとして使われているような男が主人公。だからそういう面でも屈折がある。プロデューサーの名前はソル・スパークだから、明白にアーヴィング・ソールバーグを模したキャラであるし、大女優はメアリ・モリス。名前はメアリ・ピックフォードでキャリアはリリアン・ギッシュ?というような感じ。まあだから映画界内幕ものといった雰囲気の作品で、主人公はこの大女優にも信用されていて、死後の遺言執行人にも指名されているような関係だし、自分がワンサの中から見出して出世した女優とも喧嘩別れのような微妙な関係になっていているとか、映画界での主人公のプレゼンスがちゃんと描かれている。タイトなタッチで丁寧に人間関係を描いているために、「通俗ハードボイルド」という感じはしなくて、ちゃんとハードボイルド感があるというか、ややネオハードボイルドに近い感触もあるかな。

事件は四方八方に広がっていくために、もう一つ整理されていない印象。いわゆる推理要素は薄いかな。そこらあたりもネオハードボイルドっぽいか。でも悪くないよ。合本の「人みな銃をもつ」より好き。翻訳作品集成では短編みたいに書かれているけど、長編だよ。

というか、名のみ聞くW.T.バラードだからねえ。他の翻訳は「ブラックマスクの世界」に一本あるだけじゃん。貴重。


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ジョン・シェファード
不明
しらみ野郎の死
平均:6.00 / 書評数:1