皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] おんな対F.B.I. レミイ・コーション |
|||
---|---|---|---|
ピーター・チェイニイ | 出版月: 1965年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 久保書店 1965年01月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2025/03/16 10:49 |
---|---|---|---|
(ネタバレなし)
1941年7月。太平洋戦争の真っただ中。「おれ」ことFBIの捜査官レミー(レミュエル・H)・コウションは、英国に来ていた。実は、NYの測量技師ジークフリート・ラールセンからの訴えで、彼の婚約者ジューリア・ウェイルズがアメリカの暗黒街の関係者に誘拐され、英国に連れ去られたらしい。その彼女の捜索だ。コウションは、アメリカギャングで大戦のさなかに英国に拠点を移したナンバー賭博の胴元マクシー(マックス)・スクリプナーを探し出し、今回の事件の手掛かりを追おうとするが。 1942年の英国作品。 全11冊ある、FBI捜査官(実質的な立場は、諜報員に近い面もある?)レミー・コーションものの第8弾(あらすじに書いたように、本書ではコウション表記だが)。 同じシリーズでポケミスに収録の『女は魔物』がなかなか手頃な値段で入手できないなか、先に手に入ったこっちの方から、一足早く、読んでしまった。 まあホントなら論創から、比較的、近年(?)に出た、シリーズ第1作目から読めばいいんだけど(笑)。 いいか悪いかはともかく、田中小実昌の翻訳が非常にクセがある(ポケミスの方も担当してるらしいが)。 さらに軽快なストーリーのように思わせて、予想外にミステリ&サプライズの仕込みも多く、存外なほどに歯応えがあった。 大戦中の時局のなか、アメリカ暗黒街の状況を英国に渡ったコーションの視点から語る場面があったが、戦時中に通常の闇商売での金儲けなんかやりにくく、さらにギャングでも愛国心のある者は出征したりしてるので裏の世界も活気がない、という主旨で読者に伝えられる。その辺の事情も含めて、作者の母国である英国が本作の舞台になるのだが、この辺のリクツづけは面白い。 ミステリとしての大きな謎は、そんなややこしい現状(暗黒街にも影響を与える戦況)のなか、なんでアメリカギャングが女性ひとり誘拐して、さらに身代金を要求するわけなく(そもそも当該のゲストヒロインの家は特に資産家というわけでもないようだ?)、わざわざ英国まで連れて逃げてきたのか? (そもそも、本当に被害者は英国にいるのか?)というホワイダニットの興味が浮かび上がり、その辺が終盤まで物語の奥に伏在してる。 この趣向は、なかなか。 ただ話の二転三転ぶりが多すぎ、読み手の自分としては楽しむポイントが相対的に薄まってしまった面もある(汗)。 この辺は痛しかゆしだが、それでもまあ、それなりによく出来た佳作~秀作の下だとは思う。(実は途中で、もしかしたら……とあらぬことを考えたりしたが、それはハズれた。) QTブックスの解説は、その先行するポケミスがらみか、ツヅキこと都筑道夫が書いている。かなり本作を持ちあげてホメていて、それはいいが、作者チェイニイのシリーズ作品としては、ほかにロンドンの私立探偵スリム・キャラハンがいて、そっちの方がいまは母国英国での人気は高い、とトッポく語っているのがなんとも。だったらそっちも翻訳してよ、という思いである。(まあツヅキ的には、久保書店にさりげなく翻訳企画の売り込みを掛けたのかもしれんけど。) とりあえず、古参ミステリファンの一部にはウワサ(?)のコーションシリーズ、まずは一冊読んでみて、ああ、こんな感じか、という思いであった。 |