海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!
ログインもしくはアカウント登録してください。

[ ハードボイルド ]
首を捜せ
私立探偵ニール・コットン
サム・S・テイラー 出版月: 1969年01月 平均: 7.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


早川書房
1969年01月

No.1 7点 人並由真 2025/02/26 07:16
(ネタバレなし)
 1951年。カリフォルニア州の一地方サンピサンテの町。「わたし」ことLA在住の私立探偵ニール・コットンは、サンピサンテで地方新聞社を経営する実業家ミラード・J・ボールドウィンの長女ダイアナから、相談を受ける。ボールドウィン社長は次回の州知事選挙に出馬するつもりであり、当人は政治キャンペーンとしてスロットマシン賭博の廃止を訴えていた。27歳のダイアナは父の新聞社で主力として働き、一方で父の政治活動を支援していたので、スロットマシン反対キャンペーンで必要な諸事の仕事の協力を、コットンに申し出たのだ。だがボールドウィン家とコットンの契約が固まるその前に、ボールドウィンの新聞社で働く記者ハリー・N・チェスブロが何者かに射殺された。チェスブロもまたスロットマシン業界の周辺を調べており、殺人の嫌疑はジュークボックス設置を斡旋する音楽協会会長マニイ・ルビンにかけられるが、マニイは弁護士マーヴィン・J・ドリスコルに依頼。ドリスコルと懇意だったことからコットンに、事実関係の調査の依頼がある。だがこの二つの別筋の案件は、次第に意外な結びつきを見せていった。

 1952年のアメリカ作品。
 1949~53年にかけて全三冊が刊行された、私立探偵ニール・コットンものの第二弾。
 翻訳はシリーズ三冊のうち、本書だけしかない。
 シリーズそのものについての詳しいことは
https://mysteryfile.com/blog/?p=395(英語のブログ記事)とか読んでくれ。

 ネームドキャラは40人前後、多くも少なくもない、適度なバランス&ボリュームの登場人物で、お話の方も少しややこしいが、普通にメモを取っていれば特に問題はない。

 タイトルで明かされ、ポケミス裏表紙のあらすじで書かれてるように、事件に巻き込まれた被害者の首無し死体が、中盤に登場する。
 で、クライマックスまで読んで、なんで(ホワイダニット)死体の首を斬ったのか、最後に「え!?」という真相が明かされる。これには感心した(というかふいを突かれて、面白かった)。

 伏線の張り方も振り返れば序盤からなかなか周到で、なかには結構、大胆な見せ方(記述の仕方)を心得ているものもあった。全体的に、割とよくできているとは思う。

 『ジョーズ』平尾圭吾の翻訳は快調だが、途中で「女ジェームズ・ボンドみたいだ」という言い回しの台詞が出て来るのには「?」となった。
 だってこの本の原書のハードカバー(ゴランツ社版)、52年の刊行だよね? ボンドのデビューは『カジノ・ロワイヤル』刊行の53年だと思うのだが…… 
 まさか翻訳はペーパーバック版を底本として、そっちでは当時のボンドブームにあやかった、時事ネタ的な改稿がなされているとか!?

 しかしこのポケミスの刊行時期、69年1月(ちゃんと奥付を確認したぞ)。スパイ小説ブームもそろそろひと段落に入りかけている頃合いで、そこでなぜそんな時節に、いきなり50年代の私立探偵小説を新規に掘り起こしてきたのか、当時のハヤカワのムーブメントがよくわからん(いや、翻訳してくれたこと自体は、とても喜ばしいことだけど)。
 平尾圭吾自身の翻訳企画の持ち込みか、あるいはなんか別の大物作品との版権・抱き合わせ購入でこの一冊もたまたま、エージェントあたりからグロスで売り込まれた、そんななかの一冊だった……とか、だったのだろうか?
(なおこのポケミス、恒例の翻訳権独占作品ではない。その辺にも、版元の半ば消極的な出版事情が、覗いたりする?)

 で、21世紀のどこかの奇特な版元さん。もしよかったら、残りのニール・コットンものの二冊、今からでも邦訳出版を検討してみませんか。残りの作品もこのレベルなら、結構、面白いはずです。

【2025年2月27日・追記】
 上記のジェームズ・ボンド問題に関しましては、本サイトの掲示板コーナーの本日付の弾十六さんのご投稿をご覧ください。原文でどうだったのか、の調査をしていただきました。


キーワードから探す
サム・S・テイラー
1969年01月
首を捜せ
平均:7.00 / 書評数:1