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[ クライム/倒叙 ] 夜の恐怖 夜の恐怖 |
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ゴーグ | 出版月: 1929年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 平凡社 1929年01月 |
No.1 | 7点 | 弾十六 | 2025/02/18 22:53 |
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1922年出版。The Terror by Night by George W(oolley) Gough 原文は入手出来ませんでした。邦訳は『世界探偵小説全集15 夜の恐怖・泰西大盗物語』大佛次郎 訳(平凡社 1930)に収録。「泰西大盗物語」は大佛クレジットですが、実際は野尻抱影訳でしょうね。私は国会図書館デジタルコレクションで読んでいます。文章は非常に読みやすいです。本字旧かな遣いが気にならない人はぜひ。
自称「夜の恐怖」という強盗が出てくる連作短篇集。ウォルポールが首相を辞めるかも、と文中にあるので、1740年ごろの英国が舞台なんでしょうね(一箇所、1909年に出版された本、というのが出てくるけど、なんかの間違いだと思う)。原本には14作?が収録されているようですが、翻訳は以下の5作を収めています。(訂正: 誤解してこう書きましたが、多分全訳だと思います) (1) 金扇 (2) 黄ろい胴着 (3) 緋色の女車 (4) 琥珀の象 (5) 実のある花 ちょっと意外な展開が工夫されていて非常に面白い。原文入手したいなあ。 二作目は尾行をしてる相手が消える一種の不可能状況。Adeyのリストには載っていませんでした。結末は不可能状況とは全く程遠いものでした。 三作目は、三角関係とダイアモンドの話。展開が面白い。 四作目は、失われた遺産の話。でも琥珀の象の価値は1ギニーの安物だという。 「ちょつと、十分ばかりお邪魔をする」 私は傍に寄って、彼のがっしりした手を握って云った。 「十分?十五分にしたまひ!」 『夜の恐体』は、険しい空に目を投げてから答へた。 「よし、特別に五分だけお負けをしよう。その間に短銃の用意をして頂きたい」 来たな!と、私は思った。行く先も用件も云はず突然に呼び出しに来るのが彼の筆法である。短銃の用意をしろと云ふからには、また何か血湧き肉踊るやうな活劇の渦に飛込んで行く為に誘ひに来たのに違ひない。 かふ云ふ調子です。(←出鱈目な旧仮名遣いです…) クリスティ再読さまがお好きだと思う、世界大ロマン全集にピッタリの話。「夜の恐怖」を中心に因果はめぐる糸車。筋の起伏が良くて、文章の調子も良い。古い日本語が好きな人はぜひどうぞ。おすすめです! (追記) 抜粋訳、と書きましたが、私はGoogle Playに目次だけあるのを見て、誤解していたようです。どうやら短篇を連作長篇に仕立てた感じの構成で、目次の一章=短篇一作という関係ではなさそう。目次と話の内容との関連や、全体のページ数から考えても、全訳のように思います(原本は229ページとのこと)。 (追追記) 作者の素性がちょっとわかった。George Woolley Gough (1869-1943), historian and economist 歴史家の余技の歴史小説、という感じだろう。 (追追追記) 具体的な金額がところどころに出てくるので、1740年当時の価値換算をしておきます。 いつもの英国消費者物価指数が1750年以前には遡れないので、英国cpi基準1750/2025で283.35倍、金基準1740/1750は1.055倍、従って混合基準1740/2025(298.93倍)で当時の£1=56349円 |