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[ クライム/倒叙 ]
ファミリー シャロン・テート殺人事件
エド・サンダース 出版月: 1974年06月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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草思社
1974年06月

草思社
2017年02月

草思社
2017年02月

No.1 6点 クリスティ再読 2025/02/12 17:45
別な必要があって読み始めた本。このサイトでもとりあえず許容範囲だろう。念のために説明しておくと、1969年に起きた映画女優でポランスキー監督の妻シャロン・テートとその友人たちが自宅で惨殺された事件に、犯人グループとして逮捕されたチャールズ・マンソンが率いるヒッピーコミューン「ファミリー」の軌跡を描いたドキュメンタリである。

評者くらいの世代だと、ヒッピー然としたマンソンの振り返った全身像が採用された背表紙、斜めに影文字で「十字架にかけられたキリストと砂漠のコヨーテは同じものなんだぜ」とニューエイジ臭たっぷりのマンソンの言葉が入り、カヴァーを取ればマゼンタとイエローでマンソンの顔が浮かび上がる....この装丁のインパクトの凄さってなかったな。ブックデザインの神・杉浦康平の作品である。

内容はマンソン・ファミリーの集結とシャロン・テート事件などを経て逮捕に至るまでを客観的なデータ中心にドキュメントしたもの。ファミリーだけで21人、被害者など11人の名前が登場人物紹介として載っているが、登場人物はこんなものじゃ済まない。さらにファミリーは名で呼ばれたり名字で呼ばれたりあだ名で呼ばれたり、一貫性が薄く「誰が何した」的に文庫700ページほど延々と続く。結構読むのが大変である。作者はビートニク世代からアングラに関わる詩人。なのに感情描写を避けて淡々と事実だけを記述していく。会話さえほとんど、採用されていない。

恐ろしい話。しかしこの平板さの中に、ファミリーが根城とした砂漠の風と地獄がある。唯一著者がファミリーを「ゾンビ」と形容するあたりに、マンソン・ファミリーが耽溺した世界と、「邪悪な」リーダーによる洗脳の実態が顕れている。乱交とドラッグとスピリチュアルな教説、儀式と集団生活と終末論。「愛と平和」の花影にぱっくりと口を開ける地獄「ヘルタースケルター」。

デューンバギーは、ヨハネ黙示録の第九章に現われる"炎の胸当て"をつけたヘルター・スケルターの騎馬であった。そして彼らのまだ未知なるビートルズは、人類の三分の一に死をもって報いる"四人の使徒"だった。

さまざまな意味で「しんどい」本。だがこの「しんどさ」にはwoke思想にも現れたハリウッドとアメリカ中産階級の罪と罰、そしてオウム真理教もどこかしらに顔を出すアクチュアリティが潜んでいる。


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エド・サンダース
1974年06月
ファミリー シャロン・テート殺人事件
平均:6.00 / 書評数:1