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[ 本格 ]
欲得ずくの殺人
クリストファー・マッキー警視シリーズ
ヘレン・ライリー 出版月: 2024年11月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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論創社
2024年11月

No.1 6点 人並由真 2025/02/04 13:19
(ネタバレなし)
 コネチカット州の一角に大邸宅を構える繊維業界の大物で76歳のルーファス・ナイト。その孫娘ダフネはルーファスから寵愛を受けて恵まれた生活をしてきたが、彼女が青年弁護士アンドリュー・ストームと恋仲になったことから、ダフネは祖父の激怒の念を受ける。アンドリューの母イソベルこそは、かつてルーファスのプライドを踏みにじった、その元恋人だったのだ。そんななか、ダフネの周辺で親しい人間が殺害された。その嫌疑がアンドリューに掛かるが。

 1939年のアメリカ作品。
 ヘレン・ライリーとはどっかで聞いた名だと思い、ネットで確認したら大昔の別冊宝石に「危険な旅」とミステリマガジンに「蓄音機殺人事件」と、それぞれ短編だか中編だかが一本ずつ翻訳されている。
(ただし評者はどちらのタイトルにも、内容の記憶はない。読んでない可能性も大。)
 
 本作はダフネを主人公にしたサスペンス色の強い、動きの多いフーダニットで、論創社は、作者の作家としての大系からいえばそうだということなのか<HIBK派の実力派作家(の作品)>と銘打ってアピール? している。普通にパズラーとして売っていいんじゃないか、とも思ったが。
 
 本文が200ページ強とやや薄めの上、上記のようにイベント続出の筋立てなので、サクサク読める。翻訳も特に引っかかる箇所はなかった。
 怪しい容疑者が最後まで多すぎ、もうちょっとクライマックスまでに嫌疑の枠から外して整理すればもっと読みやすくなったのに、とも思ったが、その分? 犯人はそれなりに意外であった。 
 ただそれまでのキャラ描写からちょっとよじれてしまった印象もないではないが、これは読み手の主観なり読み込みなりにも関わるかもしれない。あと、真相に至る伏線や手掛かりはあんまり多くない、とも思えた。
 
 本書は作者のレギュラー探偵でNY市警マンハッタン殺人課クリストファー・マッキー警視シリーズの一編だそうだが、当人はほとんど物語に登場せず、その部下の刑事「トッド」ことトッドハンターが警察側の主要キャラになる。
 絵夢恵氏の巻末解説によるとマッキー警視シリーズにはその手のものも多いらしく、メグレシリーズと公称しておきながら当人はほぼ登場せず、実際にはリュカやらラポワントやらばっかが活躍してるようなものか? だったら「マンハッタン殺人課」シリーズとでも銘打てばいいのだろうが、まあそれじゃ本国のミステリ出版界でも商業企画的に弱いんだろうな? 

 たしかにある意味じゃ、名探偵が登場する謎解きものというよりはサスペンスものとして読んだ方がいい作品で(フーダニットの要素ははっきりあると思うが)、その意味ではあまり埋もれていたパズラーの秀作、佳作とかいわなかった論創の商売は適切かも。
 評点はこのくらいだが、実質プラス0.5点。二日にわけて読もうと思ったが、イッキ読みしてしまった。

※最後に、まったくの余談ながら論創といえばついにあの『おうむの復讐』のアン・オースチンを発掘新訳する動きがあるそうで、これは大いに楽しみ! 一日も早く手にとれることを願っている。


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ヘレン・ライリー
2024年11月
欲得ずくの殺人
平均:6.00 / 書評数:1