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[ 時代・歴史ミステリ ]
影の子
デイヴィッド・ヤング 出版月: 2018年05月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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早川書房
2018年05月

No.1 6点 YMY 2025/01/07 21:45
一九七五年二月、東ベルリンの壁に隣接する墓地で顔面を損壊された少女の遺体が発見され、人民警察のカーリン中尉は、国家保安省の中佐から、少女の身元を突き止めるとともに、「東側に脱出しようとしたところを西側の警備兵に射殺された」という筋書きを裏付ける証拠を見つけるようにと命令される。万一矛盾する場合は、他言無用という釘を刺された上で。青少年労働施設への派遣から復帰後に人が変わってしまった夫との仲がぎくしゃくし、公私とともにトラブルの予感を覚えつつ捜査を進めるカーリンは、徐々に東ドイツの中枢に潜む暗部へと足を踏み入れてしまう。
「この事件には秘密が多すぎる。嘘が多すぎる。なにを信じたものか、誰を信じたものかもわからない」と彼女が述懐するように、冷戦下の共産主義国家という特異な環境下の警察捜査小説として幕を開けた物語は、やがて諜報小説の色合いを強くしていく。その一方で謎解きミステリとしての興趣も盛り込まれた野心的で骨太なミステリだ。
東ドイツの体制に肯定的な主人公という設定も面白い。彼女の信条が、次回作以降変化していくのか、という点も興味深い。


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デイヴィッド・ヤング
2018年05月
影の子
平均:6.00 / 書評数:1