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[ その他 ] 青年は荒野をめざす |
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五木寛之 | 出版月: 1974年06月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 文藝春秋 1974年06月 |
![]() 講談社 1979年11月 |
No.1 | 7点 | 斎藤警部 | 2024/12/21 01:28 |
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「どうしたんだい、その金は?」
「あの車をバラして片づけたのさ」 「大丈夫かね。そんな事をやって」 「大丈夫じゃないから逃げるんだ」 主人公ジュンはトランペッター。 自分のジャズにズゥンと深みを与え、艶々に磨き上げるため、新宿は馴染みの店にしばし別れを告げ、ユーラシア大陸横断の旅に出る。 旅と冒険に揉まれて成長する若者の姿を健やかに描いた快作。 ジュンの周りの人間たちとの絶妙な距離感と温度感。 ミステリの快感にも通じる熱い再会、甘苦い再会、やたらな再会(笑)の連なりも素晴らしい。 “ペットとの久しぶりのキスは、甘く、爽やかで、感動的でさえあった。” 或る作曲家との出遭い、これは沁みた。 彼の或る決心と、餞の言葉。 そして、ジュンとは異なる楽器プレイヤー師匠の滋味深い、深過ぎてナニが急過ぎてちょっぴり絵空事の青空に軌道掠る感じの、だが断固心を掴みに来る言葉の花束と想いの数々。 性愛、友情、と来て肝腎の(?)恋愛がなかなか登場しないな、と思っておったら 。。 うむ、恋愛どころではないのだな。 それも良しだ。 遠心力が強過ぎる大ツイストにぶん回される展開もある。 普通だったら “強がり” と自動的に解釈される或る返答が、実はそうじゃない、という面白い一瞬のシーンもあった。 或る章の終わり際、「雪国」 への荒っぽいオマージュのようなイカしたフレーズもあった。 ああ、いい台詞いっぱい。 意味合いが濃縮された文章群だが、リーダビリティは強×3だ。 "<二人ともうまくやってるんだな> とジュンは考え、とても嬉しい気がした。 コーヒーは体のすみずみにしみわたるほどうまかった。" 旅はやがてイベリア半島某所で区切りを迎え、文字通り眼前に広がる大きなエンディング以降の幻へと引き継がれる。 続篇は(いまのところ)無い。 文春文庫表紙のジュン、佐々木朗希が野球をやめて目つきの悪い不良になったようである。 だが小説の内容は、意外と健全。 それもまた良し。 |