皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ サスペンス ] マジック |
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ウィリアム・ゴールドマン | 出版月: 1979年02月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 早川書房 1979年02月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2024/11/25 18:49 |
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(ネタバレなし)
「わたし」の名は「ファッツ」。腹話術の人形で、テレビでも人気を博す30代前半のハンサムなマジシャン兼腹話術師コーキー・ウィザーズの相棒だ。相棒コーキーは、本名チャールズ・ウィザーズ。コーキーはもともと、スポーツ好きだが非健常者だったため息子にプロのスポーツ選手となる夢を託したマッサージ師の父親マットに養育されたが、10台の半ば、無理なフットボールの練習中に両足を骨折。入院中に病床の中でカードマジックに興味を覚え、青春時代の苦い失敗の想い出などを重ねたのち、ベテラン奇術師のマーリン・ジュニアに弟子入りした。師匠マーリンから奇術は常にエンターテインメントであれとの教えを受けたコーキーは、失敗のなかでファッツに出会い、それから「二人」は栄光の道を歩み始めた。だがコーキーがひとりの人物に再会したときから、事態は新たな局面に向かう。 1976年のアメリカ作品。 邦訳ハードカバーのジャケット表紙に不気味な顔(つまりこれが人形のファッツだ)が描かれており、最初に本書を手に取った時から読みたいけど怖い、怖そうだけど読みたい、の気分を振幅させていた。 で、この十年くらい、もういい加減読もう読もうと思ってはいたが、実はまだ本の現物は購入してなかった。そのくせ、古書価は常時、総じて高値安定でなかなか手が出しにくい。 そこで一念発起して、このたび図書館で借りて読んでみた。 腹話術師(&マジシャン)の芸道、そこから生じた人格乖離、といった軸となる文芸設定は当初から作者も読者も共有する趣向(前提)で語られるサイコスリラーサスペンスであり、じゃあ初めからネタを割った分、話はどこに向かいどのように流れるのかという興味が湧くが、その辺は現在形のプロローグから、一旦過去のコーキーの少年期に時代設定が戻り、そこから改めて本筋が動き出すという構成で見事にクリアされている。 真の本編といえるコーキーの少年時代からの歩みは、スティーヴン・キングのよく出来た作品に通じる青春ドラマでぐいぐい読ませる。本書はこういう作品だったのか、と思った時点で、読み手はたぶんまんまと作者に乗せられている。 中盤から現在形の時勢に話が戻り、そこからクライマックスに向けてじわじわと話が転がっていくが、意外なほど二人の主人公(コーキーとファッツ)の視野は広がらず、常にまとまりのよい人間模様が綴られていく。カメラアイを固定気味にしたような後半の筋立ては、なんとなく予期していたものとは違ったが、特にその構成で破綻したわけでもなく、むしろ前述のようにまとまった仕上がりだ。 二段組の本文で250ページ弱はこの設定、話の流れにしては短い、という思いもないではないが、とにかくひと晩でいっきに読んでしまった。作品のある種のネタバレになるかも知れないので読後感は控えるが、思っていたようなコワイものとは少し違う(いやショッキングなシーンはそれなりにあるけど)ものの、なんか別の感触で(中略)と楽しめた感じ。 ただまあ8点……はちょっと高すぎるんだよな。この評点内の高い方で、ということで。 大枚はたいて稀覯本を購入する必要はないと思うが、そこそこの値段かもしくは借りて読めるなら、キングのスーパーナチュラル度が低めのホラー系作品とかがスキなヒトなら一読しておいても悪くはないとは考える。 |