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[ パスティッシュ/パロディ/ユーモア ]
なんで死体がスタジオに!?
森バジル 出版月: 2024年06月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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文藝春秋
2024年06月

No.1 7点 人並由真 2024/08/18 10:57
(ネタバレなし)
 昨年の連作短編集(広義の長編)『ノウイットオール あなただけが知っている』が結構良かったので、私的に注目している新鋭の作者の著書第二冊目。今回は、完全に長編仕様の書き下ろし。

 テレビ局内の生放送番組の最中に死体が見つかり、いっときだけ、事を荒立てたくないメインキャラの局スタッフ(若い女性)はその事実を秘匿しようとする。
 読後にAmazonのレビューを見ると、序盤~前半のこの流れだけで、リアリティがないと放り出した人も少なくないようだが、かなりもったいない。まあ否定派のこだわりもわからないことはないが、その辺はフィクションの大枠の許容範囲。結城昌治の言う「大きなひとつのウソの上に、小さな多くのホントを」の、その前半部分である。

 随所にちょっとずつジワっとくる毒を感じさせる<ミステリ・ファルス(一種の戯作)>かと読みながら思っていたが、後半にいくつもの仕掛けがあってなかなか面白くなる。そのなかの大技のひとつは、ちょっと使い方がアレじゃないか? とあとから思わないでもないが、一方でその趣向でもたらされたものは確かに大きいので、まあいいや。
 まあ、ヒトによっては、こんなの以前にどっかで読んだ、とおっしゃられるかもしれないが(苦笑)。
 あと、真相の解明時に後出しの情報が多め? なのはちょっと弱点。

 どんなものが二冊目に来るかな? とそれとなく期待していたら、なかなか悪くないレベルのものを読ませてもらった感じ。あまり詳しく言えない内容だが、某・登場人物の役割の転調ぶりが、順当に(作者のたぶん思惑通りの効果が上がったという意味で)なかなか良い。ただし犯人は、このキャラかな……と見当をつけて当たった。まあそれで終わる作品ではなかったが。

 次作にもまた期待します。


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森バジル
2024年06月
なんで死体がスタジオに!?
平均:7.00 / 書評数:1
2023年07月
ノウイットオール  あなただけが知っている
平均:6.50 / 書評数:2