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[ 本格/新本格 ]
カルチャーセンター殺人講座
池田雄一 出版月: 1985年07月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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徳間書店
1985年07月

No.1 6点 人並由真 2024/08/03 16:29
(ネタバレなし)
 渋谷の繁華街の一角にある「マルフク・カルチャーセンター」。そこで48歳の現役脚本家・飛池克久は、ミステリーものののシナリオ執筆の講師を務めていた。だが彼の講座の最中に、背中にナイフを刺された男がとびこんできてそのまま死亡する。男は同じカルチャーセンターのカラオケ教室の講師で、作曲家の歌川啓輔だった。警視庁捜査一課の巡査部長で、たまたま克久と中学時代の友人だった網田一が渋谷署の若手刑事・若山とともに捜査を続けるが、カルチャーセンターの周辺ではまもなくまた新たな事件が。

 毎夜の就寝前に、戸川安宣の15年分のミステリ書評を集めた「ぼくのミステリ・コンパス」をちびちび読んでいたら、未知の面白そうなタイトルが目につく。
 紹介の仕方に妙な関心の惹き方があり、どうやら何らかの曲者っぽい? 作品みたいなので、近所の図書館にあるのを確認してから借りてきた。それが本書。

 主人公の名前はヒッチコックのもじりで、ほかの登場人物のネーミングも立場や役割に応じたイメージの漢字が用いられたり、メタっぽい要素が目立つ。
 その辺のメタミステリとしての面白さは、なにか事件が起きるごとに、主人公の克久がその話題を、自分のカルチャーセンター講座での講義や話のネタに持ち込むことで、さらに炸裂。
(作中作風に、ミステリもののシナリオ描写の断片が、随所に挿入される。)
 同時に作者の投影か、小説や映画のミステリファンでもある克久やほかの一部の登場人物は既存のミステリの話題を【具体的なタイトル名もあげずに】(←ココが重要)語りまくる。この辺の趣向もなかなか楽しい。

 最後の二重三重のオチはまあ読めるが、全体にわたって1950~60年代あたりのアメリカのちょっとだけ技巧派の軽パズラーというか、フーダニットの要素の濃厚な適度にひねったサスペンスミステリという感じで、相応に楽しめた。
 仕事で忙しいので読了まで三日もかかったけど、本当なら数時間で一気読みだったろう。
 終盤の方でとってつけたように、カルチャーセンターという社会文化についての文明批評めいたものが出て来るのも、昭和ミステリのお約束という感じでゆかしいことしきり。

 そんなに大騒ぎするほどの秀作~優秀作ではないけれど、読んでおいて自分のなかのミステリファン度がちょっとだけまた上がるのを実感できるような、そんな一冊。


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池田雄一
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