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[ SF/ファンタジー ] 六つの航跡 |
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ムア・ラファティ | 出版月: 2018年10月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
東京創元社 2018年10月 |
東京創元社 2018年10月 |
No.1 | 8点 | 糸色女少 | 2024/05/11 21:18 |
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二四九三年、宇宙船ドルミーレ号の内部で、六人のクローンが目覚めた。彼らは自分たちの前世代にあたるクローンの無残な姿を見て驚愕する。前世代のクローンのうち、四人は殺害され、一人は縊死、残る一人は瀕死の状態。そして乗船以降二十五年間のクローンたちの記憶は失われており、しかも船を管理するAIは停止し、クローン再生は不可能になっていた。
密閉された宇宙船を舞台としたSFがミステリと結びつくクローズド・サークルものになるのは理の当然だが、本書の場合、クローンである登場人物全員が冒頭の時点で死んでおり、別の意味では生きているというSFならではの設定が目を引く。 六人のうち誰が殺人犯なのかを考えれば、縊死状態で発見された人物が最も怪しいのだが、もちろんそう単純な話ではない。では誰がという謎にいくつもの疑問点が付随し、クローンたちの疑心暗鬼に拍車をかける。しかも記憶が失われている以上、たとえ彼らが内心で自分は犯人ではないと考えていても、そうである保証はないのだ。内心で自分の無実を語っている登場人物は基本的に犯人ではない、というミステリのフェアプレイのルールを逆手に取った展開と言える。 そして、六人がなぜドルミーレ号に乗せられたのかをめぐるミッシングリンクが明かされ、過去のシーンも挿入されることで、彼らがそれぞれ抱えた秘密が次第に暴かれてゆく。複雑かつ壮大に絡まりつつあった因果の糸がほぐされる過程は、あのエピソードがここにつながるのかというサプライズとカタルシスの連続で圧倒的に面白い。 |