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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
アーカム計画
ロバート・ブロック 出版月: 1988年11月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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東京創元社
1988年11月

No.1 6点 クリスティ再読 2023/11/18 11:04
ロバート・ブロックといえば、ラヴクラフトと文通し10代で「ウィアード・テイルズ」でデビューした早熟作家である。ラヴクラフトと「殺しあうくらいに仲良し」でも有名だね。若年ながらクトゥルフ神話の形成に貢献した作家なんだが、ラヴクラフト没後にはサイコホラー・SFと領域を広げながら、「サイコ」で大ブレークしたという経歴である。で、作家として地位を確立後の1979年に満を持して発表したのが、クトゥルフ神話に真正面からアタックした本作である。

「ピックマンのモデルだ...」美術コレクターのキースが店頭で見つけた一枚の悍ましい絵を見て、友人のウェイバリーは指摘する。「ピックマンのモデル」同様に、現実の背後に蠢く邪悪な神々の陰謀を、ラヴクラフトの小説は人類に警告しているのでは?という疑惑に駆られた二人は調査を始める...しかしその秘密に近づくものは「暗黒の男」ナイ神父率いる「星の智慧派教会」というカルトの手によって、不審な死を遂げる。キースの別れた妻ケイに迫る魔の手から救ったのは政府の諜報機関員だった。政府もクトゥルフを由々しい問題と捉え、地震で浮上したルルイエを核攻撃する計画が進行していた!

というわけで、ラヴクラフトが作りあげたクトゥルフ神話の手の込んだパスティーシュ。作中に散りばめられたネタ元に精通すればするほど「クトルーランド」に遊ぶ気持ちで読める作品だ。ラヴクラフトゆかりのプロ作家が書いた、ガチの二次創作といえばまさに、そう。
クトゥルフ神話がそのまま事実であり、ラヴクラフトはこれを人類への警告として書いた、というメタなアイデアをベースに、モダンでドライなアクション・ホラーとして再構築している。最後にはラヴクラフトの本自体が禁書扱いになっていたりする(苦笑)

アクション・ホラー化しているから、ダーレスの「永劫の探求」やラムレイのタイタス・クロウ物に近い印象があるけど、「永劫の探求」の退屈さと比べれば随分いい。けどねえ、本質がパスティーシュだからか、作者が頑張れば頑張るほど、何かシラケる部分も評者は感じるな。いや力作なのはよくわかる。でも「恐怖」の部分が「お約束」になってしまうから、怖くないんだよね...
だったらもっとパロディ色の強い菊地秀行の「妖神グルメ」の方が楽しめると思う。そのうちやろう。


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