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[ 警察小説 ]
ルパン危機一髪
贋作アルセーヌ・ルパン ボアロー&ナルスジャック原作
南洋一郎 出版月: 1980年03月 平均: 4.00点 書評数: 1件

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ポプラ社
1980年03月

No.1 4点 クリスティ再読 2023/09/19 14:43
この本困るんだよね。ボア&ナルの贋作ルパンシリーズ最終作「アルセーヌ・ルパンの誓い」なんだけど、日本では大人向け完訳が出ておらず、南洋一郎のリライトによるポプラ社児童向けしか出ていない(しかも入手は古書のみ)。
本サイト的に厄介なのは、本のカバーの著者は「南洋一郎」の名前だけ。一応6ページ目にボア&ナルの原著作権の表示はある。奥付では「訳者 南洋一郎」だけの表記。そのくせ、最終ページの「怪盗ルパン全集」の総目録では「26~30はボアロー・ナルスジャックの原作です」と断り書きあり。「はじめに」では「モーリス=ルブランのメモをもとにして、ボアローとナルスジャックがまとめた第五作目になります」と「公式設定」をそのまま記載。

まあ「えいや!」で南洋一郎で扱おう。そう思うのは、意外にルパン自身の恋愛に淡白なボア&ナル・ルパンなんだけども、本作では「たぶん」子を想う母でもあるヒロインへのルパンの恋愛感情がしっかりと描かれていたんだろう....だって、南洋一郎先生、児童向けでは平気で恋愛描写をカットする方だからね。いや実際、この真相ってルパン自身のガチ恋愛色なしに成立しづらいもののように思うんだ。「南洋一郎作品」の方に振りたくなるのはそういうあたり。

爆弾質問を控えた野党政治家がエレベーター内で殺害された!ルノルマン刑事部長はそんな政界がらみの事件に出馬。元部下の私立探偵に殺された政治家が依頼していたのが判明するが、その私立探偵も殺さているのが発見される。さらに政治家の秘書も何か秘密を掴んでおり、ルノルマンの助けを求めるが間に合わず、その秘書も密室で殺された...秘書が隠していた豪華な煙草入れの謎は?政治家夫人の愛人の若き母にルパンは恋を?

本作のルパンは「813」で活躍したルノルマン刑事部長。一瞬レニーヌ公爵になるけど、ほとんど「俺はホントはルパンなんだけど...」状態でルノルマンをずっとしている。警察官の部下(「813」で殉職したグレル刑事がお供)と、ルパン自身の配下と両方使っていて、あと紆余曲折のミスディレクションで推理が右往左往するから、感覚は「警察小説」。密室の謎は残念ながら大した内容ではない。

そんな感じ。南洋一郎も何か覇気がなくて、やっつけ仕事っぽい。本作が遺作になったそうだ。ボア&ナル的にもどうも締らないシリーズ最終作みたいにも感じる。この贋作ルパン、やはり「ウネルヴィル城館の秘密」が入手性もいいしベストかな。個人的には「百億フランの炎」も捨てがたいが。(「贋作アルセーヌ・ルパン」で検索するといいですよ)


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南洋一郎
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