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彼の名はウォルター
エミリー・ロッダ 出版月: 2022年01月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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あすなろ書房
2022年01月

No.1 8点 人並由真 2023/01/10 06:59
(ネタバレなし)
 山間での屋外授業に臨む小学生たち。だが乗車してきた二台の車のうち、一台が故障。大半の生徒が無事な車で帰還するが、全員は乗車できない。かくして二人の引率の教師の片方のアンナ・フィオーリ先生と4人の男子女子が、丘の上の無人の屋敷で一夜を過ごすことになった。そして屋敷の中で、この学校に転校してきたばかりの男子コリンは、自筆のイラストに彩られた創作童話を書き綴った自作の書物「彼の名はウォルター」を見つける。

 2018年のオーストラリア作品。
 自分をふくめて、昨年の半ばまでほとんどのミステリファンがノーチェックだったと思うが、今年度の「このミス」で、あの小山正が本年度マイベストワンに推挙したおかげで、いっきに全国的に注目された作品(ジュブナイル~ヤングアダルト小説)。

 作者エミリー・ロッダは、すでにその筆名で多くの翻訳がある童話、ジュブナイル作家だが、実は本サイトでもkanamoriさんとnukkamさんがかなり高めに評価している長編パズラー『不吉な休暇』の作者ジェニファー・ロウと同一人物だと知って、食指が動いた(と言いつつ、実は筆者などは肝心の『不吉な休暇』は半年前に入手していながら、いまだ脇に積読だが・汗)。

 屋敷の中で朝を迎える女教師と4人の小学生の叙述と並行して、擬人化された動物と人間が共存する異世界を舞台にした作中作「彼の名はウォルター」の物語全編が少しずつ語られる。中盤までは、なんでこれがミステリ? しかも小山正のイチオシ?! という印象だが、次第に作品の狙いが見えてくると(以下略)。
 ……ああ、なるほどね(深いため息)。

 読後の感慨すら書かない方がいいような性格の作品だが、通読したのち、例によってTwitterでの他の人の感想など覗くと、この数年単位での収穫! と賞賛している人もいる。100%はそんな気分にシンクロはできないにせよ、確かに読んで良かった、良作・秀作ではあった。
 最後の1ページ、8行のセンテンスが、深い余韻を伴って心に響く。
 はい、私自身もスキな作品です。
 これまで出会った、心に残る大事な歴代ミステリ作品のいくつかを、おのずと連想したりした。
 結局のところ、これがジュブナイルというか、ヤングアダルト向けというカテゴリーの中にあることも、いろんな意味で心地よい。
 
 確かに、まー、こーゆー作品は、ヒトより先に見つけて大声で叫びたかったなー。
 たぶんドヤ顔しているのであろう? 小山氏の気分はよくわかる。

 評点は0.25点くらいおまけして、この点数で。


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エミリー・ロッダ
2022年01月
彼の名はウォルター
平均:8.00 / 書評数:1