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[ その他 ] 野郎どもと女たち |
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デイモン・ラニアン | 出版月: 1987年12月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
新書館 1987年12月 |
グーテンベルク21 2021年11月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2022/09/07 20:08 |
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ラニアンの翻訳書籍は、新書館からの加島祥造訳の「ブロードウェイ物語」全4巻しかないようだから、日本編集の短編集とはいえ、これに準拠して話はしていけばいいようだ。というのも、この巻のタイトル「野郎どもと女たち」が、ラニアンの原著の第一短編集のタイトルでもあり、またミュージカル「ガイズ&ドールズ」の原作になった短編2つを収録し、ミュージカルの映画邦題「野郎どもと女たち」でもある、というややこしい部分があるからね。
評者ヅカで見たなあ。紫吹淳主演の月組。主人公「スカイ」マスタースンはギャンブラー。あだ名の「スカイ」は要するに「青天井」。ノーリミットでどんなデカいギャンブルにも応じる男伊達の心意気。スカイはクラップ(サイコロ賭博)が得意だが、こいつの得意技は「プロポジション」と呼ばれる機智に富んだ即興のフリースタイルなギャンブル。ミュージカルだとお堅い救世軍のサラー・ブラウン軍曹を「モノにできるか?」で色男のスカイが賭けたことから話が転がっていくけど、原作はサラーに惚れたスカイが、経営難の救世軍に子羊としてギャンブラーたちを送り込むために賭ける、というミュージカルでは後半の展開から始まる。でも自ら勝負に乗り出したサラーは「あたし、博奕のことはすこし知ってます。とくにサイコロ勝負のことはね。そのためにあたしの父と兄のジョーが身を滅ぼしたんですもの」なんて啖呵を切ったりする。 「女たち」だってタダの「お人形」じゃないのである。シタタカに「野郎ども」を騙し・ひっかけ・それでも純情で男をオトしたりもするのだ。そんな野郎どもと女たちの攻防の妙味もあれば、男伊達が巻き込まれるひねりの効いた事件の数々を10本収録。中には自分を撃った男に一矢報いるために、罠を仕掛ける話やら、ハードなものも。だから、ラニアンの世界というものも、ハードボイルドのひとつのかたちみたいに捉えるのがいいんじゃないかと思っている。 |