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[ パスティーシュ/パロディ/ユーモア ] シャーロック・ホームズの優雅な生活 |
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マイケル&モリー・ハードウィック | 出版月: 1974年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
東京創元社 1974年07月 |
No.1 | 5点 | クリスティ再読 | 2022/03/06 14:58 |
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ビリー・ワイルダーの1970年の映画「シャーロック・ホームズの冒険」のノベライゼーション。内容は正典にはないオリジナルで、「ホームズの私生活(原題)」に関わる事件なのでワトスン博士没後50年たって初めて公開された手記による...という設定。映画の企画は計4時間の超大作で撮影もされたようだけども、配給の都合で2時間に。編集で生き残ったプロローグ扱いの「ロシア・バレリーナを巡る奇妙な事件」と本編のネス湖の怪物を巡る話のみの映画そのままの内容を、忠実にノベライズしたもの。
ごめん、映画は見てない。ワイルダーらしい洒落たコメディなんだが、駄作、という声も高いみたいだ。 ...しかしね、ノベライズ担当のハードウィック夫妻が名うてのシャーロキアンというのもあって、記述などパスティーシュの楽しさがよく出ている。で、原注のかたちでハードウィック夫妻が、映画の設定の考証をして「おかしい!ワトスンの思い違いorわざとの韜晦か?」とツッコミを入れているのが笑える(苦笑)。たとえばプロローグ扱いのロシア・バレエは、ディアギレフまでロンドンを訪れていないし、白鳥の湖は20世紀にならないと流行らない...なんてツッコむ。ホームズ&ワトソンがバレエ団に呼ばれた事件は、プリマがホームズの胤を欲しがった、というお笑いな理由。それをホームズはワトソンとの同性愛関係を持ち出して拒絶する! いいのか、これ(笑) 本編はテムズ川で溺れかけた女性がベーカー街に運び込まれて...でシリアスに始まる話。でも最後はヴィクトリア女王まで登場してハチャメチャになっていく(苦笑)。それでもねパラソルを使った通信とか映画で見たら感動するよね、という評判のいい場面もあるから、ワイルダーらしい洒落た部分もないわけじゃない。 ちなみに、この話で登場するマイクロフト・ホームズは、ダイエットに成功したそうである。演じたのはクリストファー・リー。この人、シャーロックも演じているから、ホームズ兄弟を両方演じた唯一の役者だそうだ。 映画もノベライズも両方珍品の部類。でも「恐怖の研究」がノベライゼーションのヤル気のなさでホームズらしくないのと比較したら、ずっとマシなものだよ。 |