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[ ホラー ]
秘書綺譚
ジム・ショートハウス 他
アルジャナン・ブラックウッド 出版月: 2012年01月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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光文社
2012年01月

No.2 7点 クリスティ再読 2026/08/19 15:21
ホームズ期三大ゴーストハンターは、カーナッキ(ホジスン)、サイレンス博士(ブラックウッド)、モリス・クロウ(ローマー)で大方の異議はなかろうが、やはりブラックウッドのホラーというジャンルへの貢献度は、サイレンスもの以外でも突出していることになろう。

この短篇集は処女短篇集「空家」(1906)収録作をメインにしながら、後年の作品を補った日本独自編集のもの。サイレンスものはなく、「空家」で幽霊屋敷探訪をメインとし、ジム・ショートハウスが狂言回しとなる作品をすべて収録。

サイレンスもの第一作「霊魂の侵略者」も幽霊屋敷だから、ブラックウッドはまさに幽霊屋敷のエキスパート、と呼びたくなるくらいのバリエーション。とくにブラックウッドはマジメなオカルティストだから、現象をリアルに丁寧に描写する良さが目立つ。やはり相方は大事だね。「霊魂の侵略者」のお供は犬と猫だが、「空家」はシッカリ者のジュリア叔母。この叔母の反応が、何というかとてもイイ。「窃盗の意図をもって」では幽霊屋敷に慣れているはずのショートハウスが、若者の「わたし」から描かれれる。ショートハウス自身が取り込まれかける大失態で、これがなかなかリアル。この2作がショートハウスものでは断トツにいい。「約束」は秋成の「菊花の契り」だなあ。洋の東西を問わない話だ。

で「秘書奇譚」はホラーとしては不条理な雰囲気のもので、怪現象が起きているか微妙な話。再読だが以前創元の「怪奇小説傑作集1」で扱った時も「見ようによってはコメディ」と書いているけども、一種パロディ的な印象を受けるなあ。「怪物くん」みたい?

「炎の舌」は怪現象を絡めた道徳的教訓譚みたいなものか。いやXとかにぜひ機能を導入してもらいたいものだ(笑)「野火」は怪異譚というよりも汎神論的傾向のある詩人の内面を描いた散文詩的な作品。これはこれで作者の真情あふれる作品じゃないのかな。「転移」は「オド(生体精気)イーター」系の吸血鬼譚。人間でも吸血鬼な叔父vs吸血鬼的な土地のガチンコ対決!

というわけで、バリエーションが広く、それぞれ独自の味わいのある話を多数収録。気軽に楽しめるが、中身はなかなか本格ホラーでしっかり描かれている。

No.1 7点 弾十六 2022/02/17 03:58
2012年出版(光文社古典新訳文庫)。日本独自編集。南條竹則編・訳。南條さんの文章は大好きです。
ジム・ショートハウスもの全四作を全て収録。ブラックウッドは登場するキャラの肉付けが良いですね。すっとぼけた語り口も良い。湿度が低い感じ。
以下、初出は南條さんの丁寧な解説、FictionMags Index、ブログ『恐怖の黄金時代/怪奇三昧』ブックガイドを参照しました。カッコつき数字は本書収録順です。いつものように初出順に並べています。
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(2) A Case of Eavesdropping (初出The Pall Mall Magazine 1900-12 as “A Case of Eaves-Dropping” 挿絵Percy F. S. Spence)「壁に耳あり」: 評価6点
ジム・ショートハウスもの。
ジムはすでに40歳を超えていて、金持ちの娘と結婚して安逸に暮らしている。22歳ごろの貧乏時代を回想する、という設定。語り手は「僕」(ジムの友人)だが、冒頭だけの登場。ショートハウスを紹介する感じはシリーズ最初の作品っぽい。
怪奇ものとしては普通の感じ。
p42 習字帳や辞書に大文字の「M」で書いてある… 滅茶苦茶♠️いや、この言い回し、ちょっと日本語文としては何じゃろ?でしょうね。原文は後で確認してみよう。(2022-2-18追記: the sort of mess that copy-books and dictionaries spell with a big "M“ だった)
p44 アメリカの都会には英国風の下宿はない… 賄いつき下宿屋か、朝食さえ出ない貸間のどちらかだ♠️ここで言う「英国風の下宿」ってどんなイメージなんだろうか。(2022-2-18追記: 原文There are no "diggings" in American cities. … rooms in a boarding-house where meals are served, or in a room-house where no meals are served—not even breakfast. 英Wikiの“Boarding house”には221Bがboarding houseの一例とされていた。Webで調べたがdiggingsのイメージが全然わからない)
(2022-2-17記載; 2022-2-18追記)
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(1) The Empty House (短篇集1906)「空家」: 評価8点
ジム・ショートハウスもの。
これは傑作。何と言っても冒険に誘う女性のキャラが良い。ジムとの会話と話の流れも上出来。
(2022-2-17記載)
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(3) Smith: an Episode in a Lodging-House (短篇集1906)「スミス —— 下宿屋の出来事」: 評価5点
登場人物のキャラが立っていないので、平凡な感じ。舞台はエディンバラ。医学生時代の回想。
(2022-2-18記載)
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(4) Keeping His Promise (短篇集1906)「約束」: 評価6点
こちらも舞台はエディンバラ。上記同様、医学生の話。面白い流れ、でもエンディングには不満。そのあと、が肝心だと思うのだが…
p102「シグネット」の貧乏な物書き(poor Writers to the Signet)◆訳注「米国のペーパーバックSignet Booksか」だけどN.A.L. Signetシリーズは1948年スタート… 流石に無理っしょ。リーダース英和「Writer to the Signet [スコ法] 法廷外弁護士」
p103 奇妙なのは、帽子を冠らず(strangest of all, he wore no hat)◆男が外では帽子をかぶるのが当たり前の時代
p106 パンの塊… スコーン… マーマレード… ココア(loaf, scones, … marmalade… cocoa)◆簡単な食事。オートケーキ(oatcake)もあったようだ。
p115 ドアは内側に錠が差して(door was locked on the inside)
(2022-2-18記載)
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(5) The Strange Adventures of a Private Secretary in New York (短篇集1906)「秘書綺譚」: 評価8点
ジム・ショートハウスもの。
原タイトルにはNew Yorkとある。都会モンが田舎で大冒険、という含意もあるのかな? 盛り上げ方とメリハリが好き。
本書(2)と同様、冒頭に「僕」が出てくる。内容から考えて(2)よりも後年だが、少なくとも10年以上前の話、ジムは20代後半か30代くらいの感じ。となるとS&Wのミリ・ポリ(1899年ごろから)は間に合わない。じゃあコルトのダブル・アクションM1878かなあ。(銃を特定できるヒントは全くないので評者の妄想です)
(2022-2-17記載)
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(6) With Intent to Steal (短篇集1906)「窃盗の意図をもって」: 評価6点
ジム・ショートハウスもの。
語り手「私」は本書(2)(5)に出てくる「僕」とは違うような感じ。まだ良くショートハウスを知らない若者(歳はショートハウスの半分くらい)のようだ。ショートハウス40代の話なのだろう。
語り口と盛り上げ方は良いが、ちょっと乗り切れなかった。
(2022-2-18記載)
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(11) The Transfer (初出Country Life 1911-12-9)「転移」
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(9) The Heath Fire (初出Country Life 1912-1-20)「野火」
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(10) The Destruction of Smith (初出The Eye-Witness 1912-2-29)「スミスの滅亡」
The Eye-Witnessはヒリア・べロックが創刊し、GKチェスタトンの弟セシルが編集していた週刊誌か。英Wiki “G. K.'s Weekly“参照。
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(8) The Goblin’s Collection (初出The Westminster Gazette 1912-10-5)「小鬼のコレクション」
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(7) Tongues of Fire (初出The English Review 1923-4)「炎の舌」


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