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妖花燦爛 赤江瀑アラベスク 3
創元推理文庫全三巻アンソロジー
赤江瀑 出版月: 2021年11月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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東京創元社
2021年11月

No.1 6点 クリスティ再読 2021/12/20 17:03
さて、創元の三巻のアンソロもこれで完結。編者の東雅夫氏の好みが前面に出ていて、知名作中心の光文社での三巻のアンソロとは収録作がカブらないという、クセのつよいアンソロになった。まあでも学研M文庫の「幻妖の匣」の拡大強化版みたいなアンソロであるのは間違いない。
で、アンソロタイトルからして「妖花」。「平家の桜」「櫻瀧」「春の寵児」と桜を主題にした作品3連発で始まり、若者主体で若い頃に書いた「平家の桜」と老いてから書いた「櫻瀧」と、対比できるように仕掛けて、そのオチとして思春期の入り口に立った少年の性の目覚めを描いた名編「春の寵児」になる。そして「春の寵児」の元ネタのような若書きの詩を収録したエッセイ「花の虐刃」で〆るという用意周到な編集。

赤江瀑名作選、というと70年代あたりの凝りに凝った名文の名作の印象が強いのだけど、老いてからは京言葉の独特の語り口が楽しい作品が増える。まあだから読みやすくなるんだけどもね。若さで何もかも放擲するような「いさぎよさ」から、老いて命に恋々としがみつくさまを見つめるように、変わって行くのもまた作家の人生。若くてギラギラした作者の「体臭」に評者は強く惹かれていたのだけども、能面にすべてをなげうつ面師の「阿修羅花伝」が、そんな露悪的なまでに作りすぎな「若さ」を感じさせる反面、若き恋、しかも許されぬ恋を秘めながら平凡な人生に埋没した大部屋役者の人生が浮かび上がる「恋川恋草恋衣」。同じ芸道一途、とはいえ多面的なきらめきに広がりが出るのが、また別な読みどころでもあるのだろう。

というわけで、アンソロなので、好き嫌いはあるが、それなりにレベルの高い作品集にはなっている。「春の寵児」「恋川恋草恋衣」「伽羅の燻り」「しびれ姫」あたりが評者は面白く感じた。

大南北在世中の江戸芝居を舞台にして、血染めの小袖の謎を追う「しびれ姫」にミステリ色が強く出ている。長編大時代ミステリ書いたらよかったのにね、とも実は、思う。晩年は殺人とか自殺とか比重が減って、「生きながらえる」方に結末が傾くけども、殺人の真相ではない「人生の謎の解明」にやはり主眼がある、とは読めるだろう。そういう意味でミステリ手法はちゃんとあるし、「広義のミステリ」であることは、間違いない。


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