海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ サスペンス ]
パンドラの眠り
復顔彫刻家イヴ・ダンカン
アイリス・ジョハンセン 出版月: 2014年04月 平均: 6.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


ヴィレッジブックス
2014年04月

No.1 6点 クリスティ再読 2021/10/29 21:54
一応ロマサスのジャンルに入るのだけど、ロマンス色は意外に薄くて、王道のサイコスリラー、という感じのもの。この著者も、結構「ロマサスの女王」と呼ばれることが多いようだ。人気シリーズの第8作にあたるけども、リーダビリティ絶大で途中参入でもあまり問題なし。

ヒロインのイヴ・ダンカンはシングルマザーとして娘ボニーを育てていたのだが、連続殺人鬼によって攫われて行方不明になっている。その捜査で知り合った刑事クインと恋人になり、ともにボニーの行方を捜すのだが、それを通じて、イヴは勉強しなおして、頭蓋骨から生前の顔を蘇らせる「復顔彫刻家」としての才能を開花させた。ある日、イヴのもとに「自分がボニーを殺した」という男からの電話がかかってきた...キスルというその男にはやはり連続殺人鬼の容疑がかかっていた。この電話は、捜査に強い影響を持つ復顔彫刻家であり有名誘拐事件の被害者の母である、イヴを挑発するためにサディストのキスルが仕掛けた罠だった。このキスル、ランボーのようなサバイバルのプロで「ボニーの墓を教える」という口実と、新たに誘拐した少女の安否を賭けて、イヴに挑戦したのだった。イヴはクイン刑事と前作で知り合った傭兵上がりの武器商人モンタルヴォとミゲル、それに霊能者のメガンとともに、キスルの罠にあえて飛び込む...

キスルの罠の舞台はジョージア州のオケフェノキー湿原。それに特殊部隊上がりのクイン刑事と、コロンビアのゲリラ上がりのモンタルヴォが挑むことになるわけで、いやロマンスというより劇画調のハードロマンの部類でしょ。男性が読んでもさほど違和感がないんじゃないかな。でもこの二人がイヴを巡るライバルのわけで、恋のさや当て&男の友情もあり。要するに、この作品の「妙」は、誠実で真面目なクイン刑事、ワイルドでちょいワルなモンタルヴォの対比に加えて、どう見てもイヴに惚れてるようにしか見えないくらいにイヴに執着する犯罪者のキスル、とうまいグラデーションでオトコを配置したあたり。

でもね、意外に決着はあっけなし。霊能者のメガンの役回りもやや意外だけど、どうやら著者の別作品から参加したキャラのようだ。ちなみにモンタルヴォの副官みたいなミゲル君、なかなかナイスなキャラ。普通に面白い。

「ロマンス小説」の枠内でも、劇画調のハードなスリラーが書けるんだよね、というのが面白い。恋のさや当てはあっても、官能色はかなり薄いです。


キーワードから探す
アイリス・ジョハンセン
2014年04月
パンドラの眠り
平均:6.00 / 書評数:1