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[ ホラー ]
グッバイ・マイ・スイート・フレンド
三沢陽一 出版月: 2018年03月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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光文社
2018年03月

No.1 7点 人並由真 2021/10/29 04:30
(ネタバレなし)
 幼少時から格闘技マニアだった「俺」こと高校一年生の藤怜士(ふじ れいじ)。怜士は中学時代から、新興の総合格闘技「ライジング」の女子部で無差別級チャンピオンの座に輝く同年代の少女、本城麻里奈に声援を送っていた。そして高校に入学した怜士は、同級生にその麻里奈当人がいるのに気づく。校内では秘密のまま、格闘技チャンピオンとそのサポーターとして距離を縮めていく二人だが、そんななか、麻里奈の次の相手が格闘技界の女子アイドルで「ヴィーナス」の異名をとる九条亜美に決定した。麻里奈と亜美はもともと同門の流派で、特別カードとして今度の対戦はマッチングされていた。そんな時、亜美から麻里奈宛に予想外のメールが届く。それは都市伝説の殺人妖怪「紫の隙間女」に関するものであった。

 クリスティー賞受賞作家である作者による、第五冊目の著作。
 評者は『アガサ・クリスティー賞殺人事件』『華を殺す』に次いでこれで三冊目の付き合いだが、シンプルな面白さ&読みごたえというか物語の熱量としては、これが今のところ一番、好感触。

 作者あとがきによるとご本人がもともと格闘技&それを題材としたエンターテインメントの大ファンだったらしいが、本作はその格闘技ネタを主題に、オカルトと謎解きミステリの要素を組み合わせ、ライトノベルの仕様でまとめた感じ。
 やや強引に言うなら、青春格闘技アクション・ホラー、いくぶんミステリ風味というところか。

 書き手が自分の好きな分野のことを良い意味でマイペースに綴り、しかしちゃんとエンターテインメントとしてまとめている感じで、クライマックスの対決シーンは結構な読み応え。クロージングの文芸も、いい感じにシメている。

 ミステリの書評サイトで扱うにはギリギリという気もする(一方でまったく無縁な中身だとも思わない)が、なかなかユニークな作品を読んだ感触はあった。
(なんか初期の菊地秀行の、ノンシリーズものの青春アクションホラーに通じる味わいもあるが。)

 物語全体のボリューム感の点でやや貫録不足だが、一方で主軸の部分には確かに相応の熱気は感じた。
 相応に心に残る一冊だとは思う。私は推します。


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三沢陽一
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