海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ コージー ]
アガサ・レーズンの困った料理
英国ちいさな村の謎
M・C・ビートン 出版月: 2012年05月 平均: 6.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


原書房
2012年05月

No.1 6点 nukkam 2021/08/14 22:44
(ネタバレなしです) 英国の女性作家M・C・ビートン(1936-2019)はマリオン・チェズニーという別名義で100作以上のヒストリカル・ロマンス小説を書いていますがミステリーの方もビートン名義でマクベス巡査シリーズを約30作、アガサ・レーズンシリーズを約30作残す多作家でした。1992年発表の本書が後者のシリーズ第1作です。ロンドンでがむしゃらに働いてPR会社の経営者に上り詰めたアガサが53歳で引退して、石造りの家々が並ぶ村が点在するコッツウォルズのコテージで暮らすという長年の夢を果たします。ところが村のコンテストに出品したキッシュを食べた人間が毒死してしまったらしい事件に巻き込まれるプロットです。アガサという名前から何となく予想がつきましたが、作中でアガサ・クリスティーやミス・マープルの名前が登場して本格派推理小説好きの読者としてはニヤリとします。コージー派ミステリー的な緩い謎解きではありますが、効果的なミスリーディングの技巧があるなどシリーズ第1作とあってかまずまずの出来栄えと思います。村の生活になじもうと時に暴走気味ながら奮闘するアガサの描写も面白く、「アガサ・レーズンと完璧すぎる主婦」(2005年)のコージーブックス版の巻末解説で発表された読者人気投票で1位だったのに納得です。