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[ クライム/倒叙 ] サンダーボルト |
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ジョー・ミラード | 出版月: 1974年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1974年01月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2021/07/27 06:16 |
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(ネタバレなし)
1970年代。アイダホ州の田舎町の教会で、中年の神父ジョン・ドアティーが、突如現れた男から襲撃を受ける。逃走したドアティーは、片足が義足で美青年の小悪党「ライトフット」にたまたま救われた。ライトフットは神父の僧衣のドアティーを「プリースト」と呼び、成り行きから正当防衛の形で襲撃者を返り討ちにした。やがてライトフットは、その男「プリースト」の正体が、勇名を轟かせた大物金庫破りの「サンダーボルト」だと気づく。 1974年のアメリカ作品。 同題のクリント・イーストウッド主演(サンダーボルト役)の映画が日本でもアメリカでも1974年に公開されており、評者は昔からちょっと興味はあるが、まだ観てない。 しかしこれまでスナオに小説は原作だと思っていて、実際に翻訳書の訳者あとがきでも「映画化されるので楽しみ」とかの主旨で書いてあり、奥付も作者ジョー・ミラードのクレジットのみ。 素直にそれらの情報(訳者あとがき、奥付)を受け入れれば確かに小説は映画の原作っぽいのだが、念のためwebで原書の発行時期を確認すると、1974年(ハヤカワノヴェルズの奥付での原書刊行年も同年)。 1974年に刊行された小説が、その年の5月(アメリカでの封切り)に公開できるように企画制作されるワケがまずない。 まあ特殊な事例として、書籍化される前、どっかに雑誌連載されていた時点で企画が始動していたとか、小説の完成前に映画化権が買われていたとかの可能性も皆無とはいえないが、実際のところは、原作ではなくやはりノベライズだったのだろう。だとしたらこの小説版の素性については、版元は購読者に向けて、かなり曖昧な態度を、意図的にとっていたといえそう。さすが昔の早川、あこぎな商売である。 (ついでに言えば、訳者・佐和誠の翻訳文は昔から結構好きな評者だが、今回の訳者あとがきは、先ほどのノベライズという事実秘匿を抜きにしても、全体的にかなりヒドい。内容についてのコメントにかなりの違和感があり、実際の翻訳は下訳に任せて、最後の最後で監修だけして、中身についてそれほど読み込んでいないのじゃないか? と疑りたくなるほどだ。) とはいえ、とにもかくにも小説で読むクライムノワールとしては、そこそこ面白い。会話が多くて小説としての旨味が薄いのはナンだし、普通の小説ならもっと膨らませて役割を負いそうな脇役とかも、ほとんど無意味に顔見世だけしてすぐに引っ込む。 そういう意味では悪い意味でノベライズっぽいのだが、後半のヤマ場となる主人公たちの大仕事、その準備のために手間ひまをかけるくだりなどは小説メディアとしてそれなりに読ませる。 21世紀の現在、webで情報を拾うと作者ジョー・ミラードはウェスタンの著作がかなりあり(それら全部がノベライズということはないと思う)、一時期はDCコミックでバットマン主役タイトルなどの文芸もこなしていたようだ。日本ではこれ一冊しか翻訳がなく、つまりおそらくオリジナル作品は紹介されていないハズだが、そこそこのランクの職人作家だったのだろう? まあそのくらいには、小説(ノベライズ)のクライムノワールものとしての水準にはなっている。 きちんとした評価(ノベライズとしての)は映画本編を観てから改めてすべきだろうが、とりあえず小説(ノベライズ)単品として読んで、現状では評点はこのくらいで。クロージングの余韻は、なかなかいいよ。 |