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[ 法廷・リーガル ] 黒の捜査線 |
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クリス・ストラットン | 出版月: 1971年03月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
角川書店 1971年03月 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | 2021/07/10 06:55 |
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(ネタバレなし)
アメリカのドリーン郡。37歳の白人の地方検事デイビッド・ロウは末期癌に冒されて死にかけていたが、年長の友人でもある名医ブルース・ケルマン博士の手術によって、脳組織を頭部を損傷した他人の肉体に移植して甦る。しかし肉体を提供した事故死者のラルフ・ディクスンは同年代の黒人であり、青年検事デイビッドは黒い肌で職務に復帰することになった。地方検事の事務所の中にはデイビッドの帰還を素直に喜ぶ者もいる一方で、黒人の下で働けるかと辞表を出す者もいた。そしてデイビッドの愛妻マーガレット(メグ)は、理性では受け入れようとしながら、黒い肌となった夫にどうしようもない抵抗感を覚える。そんなデイビッドの担当する大きな案件、それは25歳の美人の黒人女性の殺害事件で、しかもその容疑者として、デイビッドにとっても因縁の人物が浮上してきた。 1969年のアメリカ作品。ミステリ界を含むアメリカ文壇全般が、ブラックパワーブームだった時期のたぶんど真ん中に、書かれた一冊。 ヒット作『夜の大捜査線』のタイトルにあやかった邦題の映画が本邦で公開される機会に、その映画の邦題そのもので邦訳出版された作品。医学SFの興味と人種差別問題の社会派テーマを擁しながら、ミステリの山場は法廷もののジャンルに向かう内容。 ちなみに評者はくだんの映画はまだ観たことがないが、主人公デイビッド(黒人ラルフ)役は、棺桶エドか墓掘りジョーンズかのどちらかを演じた黒人俳優レイモン・サン・ジャックが、担当したらしい。 もちろん医学SF設定の部分はあくまで人種差別テーマを浮きだたせるための便法で、中身そのものは良くも悪くも直球の社会派ヒューマンドラマになっている。 愛と友情、理性と生理的な摩擦感、建前と本音の相克がそれぞれ登場人物たちの試練となるドラマは生硬とも旧弊ともいえる王道な作りだが、まあこれはこれで骨っぽいオーソドックスな作劇として楽しめた。 レイシストの敵役との対決になだれ込む法廷ミステリとしての山場はそれなりの熱量。ただし謎解き作品としての興味はほとんどない。それでも最後は、こちらが油断していたこともあったが、もうひとつ「押し」てきてなかなか楽しめた、というか読みごたえがあった。 書かれた時代も勘案して、こういう作品はこれでいいのだ、という決着点を迎える。 ヒューマンドラマとして、登場人物たちの偏差値が全体的に高いのが、ちょっと(中略)という感じもしないでもないけれど。 これも6~7点と迷ったところで、この評点で。 |