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[ SF/ファンタジー ] 大宇宙の魔女 無宿者ノースウェスト・スミス/改題(別編集)『シャンブロウ』 |
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C・L・ムーア | 出版月: 1971年09月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1971年09月 |
論創社 2008年07月 |
東京創元社 2021年11月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2021/06/28 19:44 |
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(ネタバレなし)
地球人のみならず、亜人姿の金星人や火星人がひしめく、未来の(もうひとつの)太陽系。宇宙パトロールに目をつけられるアウトローガンマン(密輸船の船長らしい)のノースウェスト・スミスは、火星の植民地の一角で「シャンブロウ」と呼ばれる褐色で赤毛の美女に出会う。なぜか町の連中に処刑されかかっていたシャンブロウを気まぐれに救ったノースウェスト・スミスだが、そんな彼女にはとある秘密があった。 (「シャンブロウ」) かのヘンリイ・カットナーの夫人でもあったC・L・ムーアの手による、スペースオペラ・プラス・ホラーヒロイックファンタジーの連作「ノースウェスト・スミス」シリーズの初期短編4本をまとめたもの。 1933~34年にかけていずれも「ウィアード・テールズ」に掲載された。 早川SF文庫版は、第一次アニメブームや70年代後半の本邦SFブームのなかで、松本零士の美麗なジャケットアート&挿絵で当時の若い連中を牽引して(というより改めて幅広く注目されて)、当然ながら評者も買うだけは買っておいた。ただでさえ、ノースウェスト・スミスの名前は、当時のヲタクの必修ワードのひとつみたいな感じさえあったし。おかげで気がついたら当家には、同じ早川SF文庫版が2冊ある。 とはいえそんな世代人には有名な作品で、往年のSF&スペオペ&ホラーファンには広く親しまれているはずのタイトルなのに、本サイトにはまだレビューがないどころか、作者ムーアの登録すらない。 (ムーア&カットナー夫妻って、ロバート・ブロックやフランク・グルーバーともパルプマガジン時代からの盟友だったというじゃないの。) というわけで例によって、本を購入してから数十年目にまた一念発起して初めて読んでみたけれど。う~ん。 まず前提として評者は、本シリーズが、スペオペ設定(とはいえあんまりあちこちには飛び回らない)の中での折竹孫七(小栗虫太郎)もの、あるいは人見十吉(香山滋)もの、みたいな秘境冒険ものまたは妖女もの、みたいな作風なんだろうなという観測があり、それは実際に当たらずとも遠からずではあった。 ただし実作に触れてみると、各編の印象は結構バラバラで、正直、かったるい話は予想以上にキツイ。ファンの人、あるいは昔から本シリーズに思い入れのある人、ゴメンという感じである(汗)。 以下、4エピソード各編の一口コメント(寸評&感想)。 「シャンブロウ」 ……なんのかんのいって、今となってはベーシックでオーソドックスな宇宙美女怪談。しかし物語の冒頭でいきなり作者の方からネタバラシってのは、良かったのであろうか? 「黒い渇き」 ……話の導入、舞台設定、SFホラーのポイント、そしてヒロインの魅力、後半に登場する大物、クロージングの余韻、と、これが一番面白かった。良かった。ちなみに本書の表紙にいる色白の半裸の美女はシャンブロウではなく、本話のメインヒロインのヴォディールの方だろうね。こういうのが、当方が期待した<スペオペ版人見十吉もの>のスタンダードということになる。 「真紅の夢」 ……第二話をシリーズの定形フォーマットに見定めた上で、チェンジアップを効かせた一編。悪くはないが、「黒い渇き」のあとでは見劣りがする。 「神々の塵」 ……2~3話との差別化のためか、異世界(秘境冒険)ものながら、ホステス役のメインゲストヒロインが登場しないという残念な話。その分、スペオペSFから、荒廃したファンタジーっぽい世界に変遷する感覚はかなり際立ってはいるんだけれど、一方で延々と情景描写を紡いでいくだけではかったるさは拭えない(汗)。正直、読んでいて眠かった(大汗)。 ……なんかこういう、秘境冒険ものまたは妖女ものジャンルの連作ヒーロー譚として読んで、改めてこの手のシリーズをどう書きついでいくのがセオリーか? いろんなものが見えてくるような気がしないでもない? 第5話以降も、いつか機会を見つけて目を通してみよう。 |