海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ SF/ファンタジー ]
オブ・ザ・ベースボール
円城塔 出版月: 2008年02月 平均: 7.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


文藝春秋
2008年02月

文藝春秋
2012年04月

No.1 7点 糸色女少 2021/03/19 22:18
破天荒で不条理な設定。物理学や数学や哲学の「ゴタク」を並べるのが妙味となっている。全体を包む倦怠感やワイズクラックの応酬、短い断章を重ねる構成も「ジェイ」というバーテンも出てくる村上春樹の「風の歌を聴け」あたりを彷彿させる。断章が四十章ちょうどというのも「風の歌を聴け」と同じ。これは意図的に合わせたのだろうか。
文章には類語反復が多用され、名目はあれど内実はあやふやなまま、いつ降るとも知れぬ人を待って毎日を無為に過ごすという話は、カフカの「城」やベケットの「ゴドーを待ちながら」も想起させる。そのような文学的仄めかしによるくすぐりが満載。
残酷な結末は唐突に訪れる。ラストの語り手の従容とした足取りは、「前向きの傍観」のようなものを感じさせ、いやな読後感はない。併録作「つぎの著者につづく」は、虚構の魔術師ボルヘスの上を行こうとする手の込んだ意欲作で大いにうけた。


キーワードから探す
円城塔
2018年07月
文字渦
平均:7.50 / 書評数:2
2015年11月
プロローグ
平均:6.50 / 書評数:2
2015年09月
エピローグ
平均:6.00 / 書評数:1
2008年02月
オブ・ザ・ベースボール
平均:7.00 / 書評数:1
2007年05月
Self-Reference ENGINE
平均:5.50 / 書評数:2