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[ ホラー ]
アッシャー家の弔鐘
ロバート・R・マキャモン 出版月: 1991年07月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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扶桑社
1991年07月

No.1 7点 人並由真 2021/02/07 07:30
(ネタバレなし)
 1847年3月。愛妻ヴァージニアと死別して悲嘆にくれるE・A・ポーの前に、一人の紳士が現れた。紳士は自分が、ポーが著した短編『アッシャー家の崩壊』の主要人物ロデリックの弟、そしてマデランの兄であるハドスン・アッシャーだと名乗った。当惑するポーにさる事を確認してすぐ、その場から去るハドスン。そして時は流れて、1980年代初頭の現代。今日のアッシャー家は、米国はおろか世界各地の戦局にさえ常に影響する一大軍需工場の当主となっていた。そのアッシャー家の末裔=現当主ウォルターの次男である33歳のリックスは、死の商人の家業を嫌悪し、売れない作家として苦闘していたが、そんな彼に実家に戻るようにとの指示がある。

 1984年のアメリカ作品。
 マキャモンといえば、評者はこれまでウン十年前に『奴らは渇いている』ひとつしか読んでなかった(本の購読だけはちょっと、してある)。本サイトで好評の『少年時代』なんかもまだ未読。
 今回、タマにはこんなのも……と思い、蔵書の中の積ン読本を手にして読み始めてみたが、さすがふた昔前の、ながらも、かなりの人気作家。全編の筆に勢いがあり、上下巻で合計700ページの紙幅を一日かけずに読ませてしまった。 

 なるべくお話のネタバレにならないよう、序盤からの大設定のみを主軸に語るけど、古典ホラー(原典の短編小説『アッシャー家~』は広義のそれだよね?)の有名どころキャラクター(その当人のあるいは係累)が現代では大企業のトップになっているというのは、ハマー・フィルムのクリストファー・リー主演映画『ドラキュラ72』とかを連想させて実に楽しい。
 しかもアメリカのみならず全世界を市場とする国際的な死の商人で、主人公はそんな実家の仕事に反発して作家をやってるけれど、なかなかうまくいかず……のくだりには、たぶん作者マキャモン自身の文筆家としての心情吐露も入っている感じでこの辺もまた興味深い。
(一方で、ポーが、どういう事情や接点から<実は作中世界での現実であった? アッシャー家の内部事情>を書いたのか、というポイントについては……まあ、ムニャムニャ……。)

 さらに主人公リックスの里帰りとそれに連なるストーリーラインと並行して、何か訳ありな15歳の少年ニューラン(ニュー)・タープのお話が綿々と語られていき、どのタイミングでこの二つの話がどう交差するのかも、当然のごとく作品の大きな興味となる(もちろんここでは具体的には書かないが)。

 とはいえある意味で、この作品の本当の主役なのは、作家リックスでもニュー少年でもなく<現在のアッシャー家>といえる<ある建造物>であり、そのコワさは読んでからのお楽しみ、ということで。
(これはネタバレにはならないと思うが)ちょっとマシスンの『地獄の家』的な幽霊屋敷ものモダンホラーの趣もある。

 前述のように正にイッキ読みのハイテンションだし、終盤の(中略)も個人的にはなかなか刺激があった。
 ただし、最後まで読むと、それなりに存在感も重要度もあったはずの某・登場人物のひとりが、結局、この人は(中略)だったの? それで(中略)なの? という感じで、なんか作者からもすっかり忘れられてしまったのが気にはなったり(笑)。
 あと細かいところでは「この辺の説明、うっちゃったままでしょ?」というところがいくつか目についちゃうのもアレな感じで(特に一部のキャラの内面描写がかなり言葉足らずなところとか)。

 それと、終盤まで読んでわかるタイトルの意味は結構いいかも。スゴイスゴイの描写が軽すぎて、悪い意味でマンガになってしまった部分がなきにしもあらず、ではあったが。


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