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[ 短編集(分類不能) ]
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長岡弘樹 出版月: 2019年06月 平均: 5.00点 書評数: 3件

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文藝春秋
2019年06月

文藝春秋
2022年03月

No.3 5点 まさむね 2024/02/12 17:31
 和佐見市の漆間分署(いずれも架空)に所属する消防官たちを主人公に据えた連作短編集。9作で構成されますが、全短編を振り返ると10年の歳月が流れていることになります。ある短編で脇役だった者が後の短編で重要な役割を担ったりしていて、それぞれの登場人物による群像劇的な面もございます。
 短編ごとに見ると、こじつけ感や違和感が引っかかる作品もありますし、全体として中弛み感もあったのですが、前述の要素が連作短編集として一定の効果を発揮してくれた後半以降、多少盛り返してくれた感じでしょうか。

No.2 4点 パメル 2022/08/30 09:03
和佐見消防署の消防官たちを主人公に据えた九編からなる連作短編集。消防官は出場以外は、署内で二十四時間待機しなければいけないため、食事は自炊。着用した防火服はデッキブラシと洗剤で人力手洗い。トイレの個室に入ったら、いつ出場の指令が下っても飛び出せるように、いち早くトイレットペーパーを手に巻き付ける。各話三〇ページに満たない短さの中に、消防官というい誰もが知っていながら、内実は知らない特殊な職業にまつわる大変さを知ることができ、興味深く読める。
本書の最大の特殊性は、自殺絡みの案件を多く扱っていること。「石を拾う女」の主人公のモノローグが象徴的かもしれない。作中で何度も記されている通り、消防官は命を救う仕事であると同時に、救えなかった命を目撃する仕事でもある。闇を覗き込む者は、闇に魅入られる可能性が高い。けれど闇に魅入られている者だからこそ「ぎりぎり」の地点にいる人々の心情を理解し、彼らに効く言葉を放つこともできる。
「逆縁の午後」は基本ダークだが、かすかに優しいというバランスが遺憾なく発揮されている。消防官という題材と向き合ったからこそ書けた、作者らしいミステリに仕上がっている。
ただ、「逆縁の午後」以外は、ミステリとしての驚きや意外性はなく、人間ドラマとしても物足りなく感じた。

No.1 6点 E-BANKER 2020/12/21 21:08
「教場」シリーズが木村拓哉主演で想像以上のブレークを果たす!
ということで、あちらは「警察学校」が舞台で、こちらは「消防署」を舞台とする連作短編集。
2019年の発表。

①「石を拾う女」=いきなり?なタイトルだが、消防司令の今垣は、女の行動に疑念を抱くが、その結果は・・・。こんなとき人は恋に落ちるのだろうか?
②「白雲の敗北」=本作の主要登場人物となる新人消防士の大杉と土屋。見た目は正反対の二人だがコンビとなり火災の現場に向かう。先輩消防士・栂村のある行動に土屋は疑念を抱くが・・・
③「反省室」=男性社会の消防署に“紅一点”の女性消防士。こういう場合、たいがい男に負けまいと頑張りすぎるのだが、なぜか上司はつらく当たってくる・・・。そこには当然意味がある。
④「灰色の手土産」=新聞記事と大杉が行った講演原稿だけで進んでいくストーリー。でも、何があったか知らんが、こんな場面で意趣返しされるのはなぁー
⑤「山羊の童話」=こんなことでも火事って起こるんだねぇ・・・。気を付けねば。
⑥「命の数字」=ひょんなことから脱出不可能な部屋に閉じ込められた高齢者のふたり。消防士を息子に持つ男が考えた脱出方法は・・・へぇーそれは知らなかった!
⑦「救済の枷」=姉妹都市があるコロンビアの街へ講師として招かれた男・猪俣に訪れる最大のピンチ! しかし、いくら脱出するためとはいえ、こんなことするなんて! ゼッタイ痛いよ!
⑧「フェイス・コントロール」=新人消防士だった大杉と土屋も入署からはや10年・・・という設定。何と、土屋が火災現場に入ると、大杉の姿が!そして土屋の天敵までも。
⑨「逆縁の午後」=「逆縁」とは親より先に子供が死ぬこと。消防士の後輩でもある子供に先立たれた男が自ら「お別れの会」を開催。その「会」は実はこういう意味が・・・あった。

以上9編。
いかにも作者の短編集という読後感。
出来は良いと思う。「教場」シリーズで一皮むけた感のある作者だけに、実に読み応えのある作品に仕上がっている。
火災の現場で起こるちょっとした事件、微かに感じる違和感。それが終盤、用意周到な伏線だったと気付かされる。
このレベルの短編集なら「短編職人」と呼んでも差し支えないかもしれない。
横山秀夫に近づいてきたかな。
(でもこんな事件だらけの消防署。本当にあったら嫌だ!)


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