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雷均 出版月: 2019年07月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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文藝春秋
2019年07月

No.1 5点 nukkam 2020/03/10 19:44
(ネタバレなしです) 中国の雷均(レイジュン)が2015年に発表した本格派推理小説です。ドイツの裕福な家庭の養子となった盲目の中国人青年を主人公にし、中国で起こった少年の両眼をくり抜くという悲惨な事件(生命は助かります)の謎解きに挑むというプロットです。非常に構成に技巧を凝らしていることが感じられます。例えば第1章は主人公が興奮で手が震えている場面で終わり、第2章は主人公の興奮が全身に広まっている描写で始まります。ところがこの2つの章は作中時代が異なっていて実は連続性がないのです。他にもある村で犬がいないことを不思議がる場面で章を終わらせたかと思うと次の章ではいきなり犬が吠えかかる場面で開始する、やはりこの2つの章も作中時代が違っています。過去と現在を交互に描く構成は他にも例はありますがこういう技巧で読者を煙に巻くというのは私は初体験です。もっとも私がそれを理解するのには時間がかかり、何かちぐはぐで読みにくいなと思いながら読み進めました。犯人当て謎解きとは別に主人公の意外な秘密を明かすのも効果としては印象的でしたが、どこか目指すゴールをずらされたような気分にもさせられます。


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雷均
2019年07月
平均:5.00 / 書評数:1