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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
オヨヨ島の冒険
オヨヨ大統領
小林信彦 出版月: 1972年05月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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晶文社
1972年05月

KADOKAWA
1974年09月

No.1 5点 クリスティ再読 2019/07/24 20:21
夏休みこども劇場No.2。
今はなき朝日ソノラマが1969~72年まで刊行したサン・ヤング・シリーズのサブカル的影響力は凄まじいものがあった。このサイトで言えば「仮題・中学殺人事件」もそうだし、SFなら「暁はただ銀色」、それにラノベの元祖とも言われる「超革命的中学生集団」などなど、それまでの児童書の「良書」概念を覆すような面白本を立て続けに出したのだった。これもその一つで、続編の「怪人オヨヨ大統領」もこのシリーズ。
後にオトナ向けオヨヨ大統領の「SRの会」での高評価でも分かるように、ギャグ・ミステリとして人気のシリーズとなったのだが、最初は子供向けの冒険小説だった。けどね、

きのう、あたしの「ハレンチ学園」をとりあげたせいか、ヒゲゴジラこと、うちのパパは、新しいクリスマス・ツリーを買ってきた。おこったあとで、必ず、なにか買ってくるパパの心理が、あたしにはわからない。初めからおこらなきゃ、なにも買ってこなくてすむのに。
昼間、パパの書斎にはいってみると、川端康成の「雪国」と「ディラン・トマス詩集」の間に、「ハレンチ学園」がうしろ向きにさしてあった。愛読のほどがしのばれる。
あれで、かくしたつもりなのだから、パパの単純さにはあきれて、ものが言えない。

と当時のコマーシャルから映画からTV番組からサブカル全部を何もかもブチマケたような、情報量の多さがショッキングな小説だったのだ。子供向けの良識だの情操だの彼方に吹っ飛んだ、他ならぬ「今」に居直った強烈な「悪書」として、である。子供に元ネタのわからない話もあるけども、ギャグとサブカルの暴風のような過激な冒険物語を、評者とかも堪能させてもらったわけである。
がだ、この評点の低さは、実のところちくま文庫と角川文庫のリバイバルコレクションに入っている、今普通に手に入る「オヨヨ島の冒険」が、「69年のリアル」だったコマーシャルやTVのネタを「もう意味がわからないから」で割愛しちゃったバージョンなことへの抗議である(あと挿絵の割愛も痛い...作者の実弟小林泰彦のイラストじゃないとね)「わからない」と思うなら、せいぜい脚注にでもしてくれよ。そりゃ脚注だとカッコ悪いさ、けどそのカッコ悪さに耐えなきゃいけないんだ。

ああ、情けない。このイッパチも、これが、最期とおぼしめせ。...さらば、辞世を一首-敷島のやまと心を人問わば、アジのヒモノはおあずけだよーん

ああ、情けない。このイッパチも、これが、最期とおぼしめせ。...さらば、辞世を一首-敷島のやまと心を人問わば、いずこも同じ秋の夕暮れ

こりゃ、センスがナマってるというものだ。「アジのヒモノ」は1969年のヒット曲「黒ネコのタンゴ」の一節なんだけど、この軽薄さじゃないと勢いなんて出るものか。本書は何としてでもソノラマか晶文社か角川文庫の旧版で読みたいものである。


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