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[ 短編集(分類不能) ] 海の見える理髪店 |
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荻原浩 | 出版月: 2019年05月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
集英社 2019年05月 |
No.1 | 6点 | E-BANKER | 2019/07/20 16:42 |
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小説「すばる」誌に掲載された短編を集めた作品集。テーマは『家族』。
第155回の直木賞受賞作。 2016年の発表。 ①「海の見える理髪店」=表題作に相応しい一編。一流芸能人もお忍びで通うという、鄙びた海沿いの町にある理髪店。ひとりの若者がその理髪店を訪れるところから物語は始まる。そして、ラストに判明する隠されていた事実。受賞作に恥じない作品。鏡をとおしてふたりの男が向き合う・・・それが物語に深みを醸し出しているのかな? ②「いつか来た道」=いがみ合っていた母と娘。久々に母の元に娘が訪れることから物語は始まる。母と娘だからこそのいがみ合いなのか、それでも同じ空間を共有してきた家族だからこそ通じる気持ちがある。本編もラストに隠されていた事実が判明する。 ③「遠くから来た手紙」=仕事ばかりを優先する夫に愛想を尽かし、実家へ戻ってきた娘。そこには弟夫婦がすでに家業を継ぎ、同居していた。彼女の携帯には謎のメール(手紙)が届いて・・・。結局、メールの謎は論理的に解決されないから、ある意味ファンタジー風味。でも昔の夫からのラブレターを捨てずに持ってるなんて反則(男からすると)。 ④「空は今日もスカイ」=まるで児童文学のような一編。恵まれない境遇にあるふたりの子供が海べりで出会うことから物語は始まる。ひとりの子供が酷い虐待にあっていること、読者は分かるのだが、子供たちには理解できていないことがもどかしい。ラストも結構救いがない。 ⑤「時のない時計」=定年前に会社を辞めた男が、父の形見の古い腕時計を修理に持ち込むところから物語が始まる。そこは戦後すぐの時代から続いている町の時計屋。店主との会話をとおしながら、父親との思い出が次々と蘇ってくる・・・。「父と息子」というのは①と同じテーマ。 ⑥「成人式」=15歳でひとり娘を亡くした夫婦。それ以来、生きる希望を失い、在りし日の娘のことばかり思い出しながら生きてきた。そんな夫婦に転機が! そのきっかけが「成人式」。なんと娘の代わりに20歳になったつもりで出席することに! 周りの反応は当然「キモッ!」。でも、なぜかラストはほっこりさせられる。 以上6編。 「家族」テーマの短篇集というと、奥田英朗が思い浮かんでしまう。 奥田の作品は笑い:しんみり=8:2という感覚だけど、本作はその逆という雰囲気。 テーマが重い分の違いだろうけど、「旨さ」という点では負けず劣らず。 あるひとつの場面から、過去へと読者を誘う書き方・・・それこそが本作の深さにつながっている。 たまにはしんみりするのもいいのではないか。 (ベストはやはり①。あとは③⑤かな。) |