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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] ナポレオン・ソロ⑤ 人類抹殺計画 0011 ナポレオン・ソロ |
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デイヴィッド・マクダニエル | 出版月: 1966年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1966年01月 |
早川書房 1972年01月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2019/06/19 22:08 |
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一定以上の年齢の人はまず知ってるナポレオン・ソロ。TVの量産型007ではフェルプス君と並んで一番人気だろう。このシリーズはノベライゼーションがポケミスで16冊出てるけど、なぜかハヤカワの世界ミステリ全集にも本作が収録されている。「寒い国から帰ってきたスパイ」「ベルリンの葬送」のヘヴィなシリアス系スパイ名作と同じ巻である....本当に編集意図不明なセレクションである。巻末対談を読んだが、今ひとつ意図はわからない。謎だ。ル・カレに対する屈託みたいなものも感じるのだが....
とはいえ「人類抹殺計画」は「ソロ・ホームラン」と巻末対談でも洒落て評されているくらいに評判のイイ作品ではある。ソロが属するのは全世界的なFBIみたいな特務機関 U.N.C.L.E. だから相方はロシア人のイリヤ・クリヤキンになって、冷戦は関係ない。スペクターに相当するのは THRUSH で、マフィアめいた犯罪組織...ということになるのだが、リアリティどうこう言うのも野暮だ。しかし本作では「ダガー団」なる第三の組織が登場して、U.N.C.L.E. と THRUSH は合同でダガー団と戦うことになる、という変化球の巻である。だから THRUSH の内情を、直接ソロたちは垣間見ることになって、これがなかなか興味深い。 THRUSH のサンフランシスコ支部長の元に、ソロ、クリヤキン、それに上司のウェーヴァリーまでお世話になって、古強者の支部長が THRUSH 歴を語るのを謹聴する。THRUSH とは「反対分子除去、人類制服のための技術的天使団(The Technological Hierarchy for the Removal of Undesirable and the Subjugation of Humanity)」という長ったらしい名称の略だそうで、支部長みたいな古参幹部は「天使団」と言い習わしている。この団体は1891年に殺された数学と犯罪の両方に傑出した才能を持った教授によって設立されたそうである。例のあの人である。どうやらこの組織の最重要のテキストは「1984年」らしく、お土産に頂戴する(苦笑)。 支部長夫人のアイリーン(名前からして、あの女性?)は家庭的な良妻賢母といったキャラなのに、45口径をぶっぱなし、サンフランシスコ名物のケーブルカーを使った拷問で捕虜のダガー団員の口を割らせるのが素敵。というわけで、スラッシュ側がとってもイキイキ描かれている。 それにしても、世界を破壊してしまうほどの装置としては、みっともない感じの機械だな ナポさんアンタがツッコむなよ...うんでも単に楽しい。ナイス。 (ちなみにこのシリーズの中では、ヴィクトリア時代かエドワード時代のレディの生きた見本みたいなジェーン叔母さんとか、背が低くてまる顔で無邪気な微笑をたたえたジョン神父とか出てくる話があることで有名。侮りがたい。最後に、クリヤキンかわいい爆) |