海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ ホラー ]
吸血鬼ドラキュラ
別題『魔人ドラキュラ』『ドラキュラ』
ブラム・ストーカー 出版月: 1956年01月 平均: 9.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


東京創元社
1956年01月

東京創元社
1971年04月

水声社
2000年04月

KADOKAWA/角川書店
2014年05月

光文社
2023年10月

No.1 9点 クリスティ再読 2019/02/05 21:06
世紀末ロンドンの闇を闊歩する二大巨頭は...というと一人は言うまでもなくホームズだが、もう一人はドラキュラ伯爵に決っているでしょう。代名詞になるような強烈な影響を、その後のエンタメに刻印したという面で、ここが「ミステリの祭典」だろうとも、見逃すわけにはいかない。
しかもね、本作は実際の内容も、かなりミステリに近いものがある...というか、後半はヘルシング教授率いるハンターたちが、ドラキュラを追跡し追い詰める「マンハント」のお手本みたいな作品である。ドラキュラはモンスターの帝王だが、周知のような弱点も多いわけで、その弱点をヘルシング教授たちは「合理的」に突き、「時代遅れの怪異」を理性によって鎮めるわけである。構図はミステリそのものじゃないのかしら?
で本作は登場人物たちの日記、手記、記録文書、新聞記事などの集合体で成り立っているのだが、この形式もコリンズの「月長石」にヒントを得て...だそうだ。本作の場合、この形式が一種の「メディア小説」みたいな格好になっているのが非常に面白い。セワード医師なんて蝋管レコードに口述で日記をつけるし、ミナの特技はタイプ打ちだったりする。だからドラキュラに記録を破壊されても、ちゃんとコピーがあるわけだ。でこのような「メディア」性が、最終盤でドラキュラの影響下にあるミナを巡って、探知と逆探知が交錯するような「メディア戦」をヘルシング一行とドラキュラが戦うことになる。19世紀とはとても思えない、実にモダンな発想をしているのだ!
なので、本作はニアミス、というよりも「ほぼミス」と見ていいと評者は思うんだよ。必読の名作であり、少しも古びない大古典である。


キーワードから探す
ブラム・ストーカー
1956年01月
吸血鬼ドラキュラ
平均:9.00 / 書評数:1