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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 反撃 |
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ブライアン・ガーフィールド | 出版月: 1984年06月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1984年06月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2018/12/09 15:48 |
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(ネタバレなし)
弁護士エド・マールはある日偶然、マフィアの大物フランク・パスターの贈賄現場を目撃した。彼とほかの3人の公判での証言で、パスターは懲役8年の実刑を受ける。それからの8年間、アメリカ政府の証人保護政策によって新たな名前「フレッド・マシサン」と映画業界での職場を得て妻子とともに平穏な生活を送っていたマール(マシサン)だったが、パスターの釈放と同時にマフィアの報復が開始された。マシサンは家族や周囲の者を守るため、練熟の初老の私立探偵ジェイゴー・パースケースに協力を依頼。パースケースの腹心の教官ホーマー・サイデルに自らの鍛錬を願いつつ、不殺の誓いを念じながら窮地からの脱却を図るが。 1977年のアメリ作品。先行の『ホップスコッチ』でMWA最優秀長編賞を受賞した作者ガーフィールドの長編。 膨大な人員の敵集団を向こうにまわした逃走劇と反撃編といえばクーンツの『邪教集団トワイライトの追撃』ほかいくつかの例があるが、本作もそんなジャンルの一編。この手のものは主人公側と敵側との対峙にどう落としどころを見出すかが評価の大きなポイントとなる。 (個人的にこのジャンルの既読作品で、際限のないストレスを強いられる主人公の戦いの幕引きとして最もうまかったのは、クリストファー・フィッツサイモンズの『フィッシャーを殺せ』だった。) 今回もその辺が読みどころだったが、決着のしかたはまあまあ、といったところ。途中の筋運びでも、それはいささか甘いんでないの、と思われる展開に流れそうになると作者の方も巧妙なタイミングで切り返してきたりして、その辺はなかなかよくできている。それとまだ初動段階だったのであろう時代の証人保護政策の雰囲気や現実的な問題点なども伝わってきて、そこら辺も結構、興味深い。 あと、物語の大きなポイントとなるのが、主人公マシサンと彼を支援する探偵パースケースとの精神的なぶつかり合い。アマとプロ、故あってマジメに善悪の区分に執着する思いと、清濁を併せ呑み込んだ現実的な着地点を探る願い。特に後者の葛藤は、マシサンとパースケースそれぞれのなかでも立場を交錯させながら揺れ動く。この辺はなかなか読ませた。それと終盤の展開には(中略)。 全体としては佳作~秀作。しかし21世紀のアメリカマフィアのお礼参りの実状はよく知らないが、完全撤廃されたわけでもないんだろうな。まあ暴力団規制法令の強化された21世紀の日本では、なかなかそのままは採用できない本作の設定だとは思うが。 |