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[ サスペンス ]
黒い春
山田宗樹 出版月: 2000年03月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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角川書店
2000年03月

No.1 7点 メルカトル 2020/02/29 22:57
覚醒剤中毒死を疑われ監察医務院に運び込まれた遺体から未知の黒色胞子が発見された。そして翌年の五月、口から黒い粉を撤き散らしながら絶命する黒手病の犠牲者が全国各地で続出。対応策を発見できない厚生省だったが、一人の歴史研究家に辿り着き解決の端緒を掴む。そして人類の命運を賭けた闘いが始まった―。傑作エンタテインメント巨編。 
『BOOK』データベースより。

それは全くの偶然でした。400冊余りの積読本から引き抜いた一冊、それが本書でした。まるで運命の糸に操られたように・・・。勿論自分で選んで入手した物ですが、あまりに時間が経ちすぎていて中身などまるで覚えていません。それにしてもまさかこのタイミングで、と驚きを隠せませんでした。今まさに日本全土で或いは全世界で新型コロナウイルスが猛威を振るい、パンデミックに突入しかねないこの時に。なんと不吉な。北海道では緊急事態宣言が出され、安倍首相は小中高の臨時休校を全都道府県の各自治体に要請しました。それは取りも直さず、子供を守る為ではなく子供を介しての社会全体に感染拡大を阻止するもの。それが英断だったのか、それともやけくその場当たり政策だったのか。

いずれにせよ、読み始めてしまったからには読了しなければならないと思いました。それどころか読み出したら止まらないリーダビリティを秘めていて、ストレスフリーで読み終えてしまいました。

さて前置きが長くなりましたが、本作は死亡率100%の未知の感染病に、監察医、東京都立衛生研究所真菌研究室室長、国立感染症センター病原診断部の研究者の三人がチームを組んで立ち向かう物語です。ミステリ的に言えばミッシングリンク物と言えるかもしれません。滋賀県を中心に広がる感染者に共通するものは何か、そして中間宿主となる存在は、という命題に三人のスペシャリストが探究の末辿り着いた先に待っているものは。
政府特に厚労省が動かないのには大いに違和感を覚えますし、検査希望者が一万人余りに過ぎないのも疑問です。他にも細かい瑕疵はありますが、人間ドラマとして、家族愛を描いたサスペンスとして優れていると思います。そして歴史ミステリの側面も兼ね備えています。
次は高嶋哲夫の『首都感染』ですかね。それを読むのは現在抱えている新型ウイルスが終息してからにします。


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