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[ SF/ファンタジー ]
終りなき戦い
ジョー・ホールドマン 出版月: 1978年12月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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早川書房
1978年12月

早川書房
1985年10月

No.1 8点 クリスティ再読 2018/10/27 10:38
評者このところ、ネオ・ハードボイルドをいろいろ漁ってるところなんだが、やはり「70年代のアメリカ」というものが分からないと、ネオ・ハードボイルドって本質的には分からないようにも感じる。評者は年寄りだから何とかなるんだが、「70年代アメリカ」の上出来な手引きがあれば...とも思う。本作はSFだけど、この要望にマッチする面白小説だ。そう、70年代アメリカというと、「ベトナム戦争」が外せない。本作は作者がベトナムに従軍して、その体験をベースに書いた星間戦争モノのSFである。本サイト的には少し反則だが、SF苦手な評者でも大好きなSFだから紹介したいな。
時代設定は1997年。画期的な星間航法「コラプサー・ジャンプ」により人類は宇宙に進出した。異星人トーランとの遭遇から、人類はトーランと泥沼の全面戦争に突入する。エリート徴兵令によって徴兵された主人公は、過酷な訓練ののち特殊戦闘スーツに身を固めて、辺境宇宙へ旅立った。主人公は4度の戦闘に生き残るが、ウラシマ効果によって生還した世界は戦争終結から200年後の西暦3138年だった...
とあらすじを読むとタダの宇宙戦争モノなんだけども、実のところ、作者が体験したベトナム戦争の泥沼と、兵士にとっては何のために戦うのか意味不明なこと(戦死者よりも、戦わせるための洗脳による発狂者が多いんだよ)、死ぬ思いをしてやっと生還してみれば、社会は自分たちを見捨てて気楽な繁栄を謳歌している....そういう70年代のアメリカ青年の怨念を込めながら、しかしそれを「面白い小説」に仕立て上げたという空前の「SF」である。
主人公マンデラはヒッピーの両親から生まれた設定で、「曼荼羅」からのネーミングだそうだ。一時的に帰還した未来社会では、人工抑制のために同性愛が社会的に奨励され、マリファナがタバコに代わる嗜好品となり、ファッションもエリザベス朝まがいの華美なもの...とヒッピーの楽園みたいなものに変わり果てている! しかし同時に、70歳を越えたら社会貢献度が低い老人は、一切の医療を拒まれる非情な管理社会でもある。母をそれで亡くした主人公は、このディストピアへの違和感から永久戦争に戻っていった...今度は士官として従軍するが、そのときには部下すべてが「同性愛がアタリマエで、異性愛は異常」とされる時代になっていた!
とまあ社会風刺のキッツイ作品で、評者なんぞ大喜びで読む作品である。しかし、本作のSFネタ・ガジェットは結構いろいろアニメなどにも採用されていて、ハードSFとしても影響力がある。発表当時ヒューゴー・ネヴュラW受賞でも分かるように、アメリカでは熱狂的にウケたんだね。時代の気分を的確に掬いとった名作であり、今読んでも抜群に面白い作品なのは評者が保証する。たまにはいかが?


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ジョー・ホールドマン
1978年12月
終りなき戦い
平均:8.00 / 書評数:1