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[ SF/ファンタジー ]
暗黒神話
漫画
諸星大二郎 出版月: 1977年02月 平均: 10.00点 書評数: 1件

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創美社
1977年02月

No.1 10点 クリスティ再読 2021/01/04 21:12
評者800点記念は諸星大二郎の初長編「暗黒神話」。評者「生物都市」も「妖怪ハンター」も本作も、リアルタイムな世代だ。「少年ジャンプ」連載なんだけどね、そりゃ諸星大二郎の衝撃ってすさまじいものがあったよ。本作では中学生だったけど、ジャンプ切り抜きをみんなで回覧したりしてた...当時のジャンプ連載作家陣が、この「暗黒神話」の終盤は、著者確認用に発売前に配られたジャンプを、みな自作のチェックそっちのけで「暗黒神話」のページを開いた、なんて伝説もある。

これは、一種のはめ絵遊びです。古代史の材料を片っばしからぶち込み、その一つ一つを関連づけながら事件が展開し、最後に全体を眺めると、ダリの二重像の絵のように全然別の新しい絵が浮かび上がってくる...そういった緻密で壮大なジグゾー・パズルをやってみたかったのです(カバー見返しの著者のことば)

諸星大二郎なんていうと傑作数知れず(個人的には「マッドメン」推し)、だけども本作が一番「ミステリ」の味わいがあるようにも感じる。「緻密なジグゾー・パズル」の快感がそうなんだ。主人公武がたどった道のりとヤマトタケルの東征、邪馬台国の滅亡と親魏倭王金印の行方。弟橘姫と武内宿祢に三種の神器。タイムカプセル。餓鬼と馬頭観音暴悪大笑面、そして五十六億七千万年後に出現するという弥勒。これらキャッチーな古代史&神道&仏教アイテムを力業で全部つなげて、武の宇宙的な運命の結末が訪れる....暗黒神スサノオの正体は?

いやいや、これほど奔放な空想で描かれた「騙し絵」というのもないものだ。目にも彩なアイテムが乱舞して、それがラストでピチッと一つの絵になる快感! しかしさらに、次の長編「孔子暗黒伝」が「暗黒神話」とつながる趣向もあって、さらに「大きな隠し絵」もあったりする。まあとはいえ、本作を単独で「伝奇ミステリ」みたいに捉えるのが、本サイトではいいだろう。

「暗黒神話」の個人的なイチオシは、そりゃイケメンのダークヒーローの菊池彦だよ。

冬は...オリオンがきれいだ。美しい...

評者も冬の夜空を仰いで、ついついこれを呟いてしまう(苦笑)実はこれも伏線。


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