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新しきイヴの受難
アンジェラ・カーター 出版月: 2018年03月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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国書刊行会
2018年03月

No.1 8点 麝香福郎 2018/08/04 11:05
おそらくは1970年ごろ、大学教員の職を得たイヴリンこと(俺)はイギリスからニューヨークへと飛ぶ。ところが、自分たちの権利のために闘う黒人や女性の戦闘的集団によって街はカオスと化しており、勤務先の大学も爆破され、(俺)は職を失ってしまう。
そんなさなかに出会ったのが、17歳の黒人女性レイラ。(俺)は彼女の体に夢中になるものの、すぐに飽きてしまい、妊娠を告げられると、むりやり堕胎手術を受けさせ、自分は親から送ってもらった金で買った中古車で、逃げ出してしまう。
という、ろくでもない男を主人公にした長編小説。しかし、ここまではほんの序の口。砂漠で迷ってしまった(俺)は、軽機関銃を持ち、電気砂橇に乗った女に捕らえられ、地下の街ベラウスへと拉致される。
そこは、巨体の(ホーリー・マザー)が君臨する女だけの街。マザーの施術によって、完璧な女性(新たなイヴ)に生まれ変わらされた(俺)は、自分の精子を用いる処女懐胎を強要されそうになり、逃亡。ところが、今度は7人の若い女性にかしずかれた(詩人ゼロ)というセクハラとパワハラの権化のような男に捕まり、性の奴隷にされてしまい。
と、ここまでが物語中盤。イヴリン/イヴが味わう奇想天外な冒険と、(俺)から(あたし)へと意識が移っていくことで変わっていく魂のありようを描いて、これはたしかにジェンダーをテーマにした物語ではある。でも、ゴリゴリのフェミニズム小説ではない。
スラップスティックかつオーバーアクション気味な展開によって生まれる、さまざまなトーンの笑い。そう、コミックノベルとしても冴えた一作になっている。


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アンジェラ・カーター
2018年03月
新しきイヴの受難
平均:8.00 / 書評数:1