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[ クライム/倒叙 ]
テレーズ・デスケールー
別題「テレーズ・デスケルウ」「~デスケイルゥ」「~テスケイルウ」など
フランソワ・モーリアック 出版月: 1949年01月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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1949年01月

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1997年05月

No.1 8点 クリスティ再読 2018/03/11 17:49
シムノンの「ペペ・ドンジュの真相」なんてやったからは、関連作品のこれ。
評者高校生の時に本作は読んで、強烈にテレーズにあこがれちゃったんだよね。20世紀フランス文学最凶の萌えキャラである。あの遠藤周作だってオトしたファム・ファタルである。
話はほんと「ペペ・ドンジュ」とあまり変わらない。まだから本サイトで取り上げてもよかろうよ。フランスのボルドーの田舎の上流階級の娘テレーズは、家の都合もあったが、平凡な男ベルナールと結婚する(デスケールーは結婚後の姓)。結婚後は家の因習に縛られて、自分の心が死んでいくような痛みを感じていたテレーズは、火事のニュースに気を取られた夫が毒性の高い薬を多く飲んだのを知っていて見過ごす...体調を崩す夫、テレーズはどうしようもない感情に駆られて、再度夫に毒を飲ませていった...しかし、医者の告発でテレーズは裁判にかかる。家名を重んずる婚家も実家も、夫に偽証をさせることで事態を収拾するが、釈放されたテレーズを待っていたのは、世間体の維持のための軟禁だった。
「森も、夜の闇も怖くありません。森も闇もわたしを知っています。わたしはこの寂寥とした土地に似て作られた女」であり、メディアやイゾルデといった地母神的な不思議な力を備えた一種の「魔女」である。夫も周囲も、そういうテレーズを恐れてはばかるようになる。「この女はすべての調子を狂わせる天分がある」と。しかしテレーズは周囲の敵意に対して「わたしは生きるわ。でも、わたしを憎んでいる人たちの手の中で、生きる屍のように生きるわ」と「当たる前に砕けた」ような心で対抗するのである....
評者なんぞ、若かったから、本当にこのキャラにヤられたよ。そんな青春の記念碑、かな。ミステリとして読むならば、一種のホワイダニットである。最後に夫がテレーズに尋ねるので、一応の真相は、ある。本作では夫は事件後テレーズを忌み嫌うから、「ペペ・ドンジュ」とはテイストが正反対になるわけで、どっちか言えば「ペペ・ドンジュ」よりも悲劇的で、ミステリっぽいかもしれない。


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フランソワ・モーリアック
1949年01月
テレーズ・デスケールー
平均:8.00 / 書評数:1