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[ ハードボイルド ] よみがえる拳銃 酔いどれ探偵カート・キャノン |
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カート・キャノン | 出版月: 1981年02月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1981年02月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2017/10/15 15:10 |
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カート・キャノンっていうと都筑道夫が訳した短編集の方が伝説なんだけど、1作だけ長編があるんだよね。これがそう。だからマクベインというかハンターというか、は続ける気がないわけじゃなかったんだろうけど、87分署で人気者になっちゃったからには、続ける余裕がなくなってしまったあたりが真相ではなかろうか。日本じゃ都筑道夫のイレ込みによってか87分署に並ぶ人気作になったんだけど、アメリカではそうでもないようだ。Ed McBain の英語版Wikipedia は Curt Cannon については実にそっけない記述しかないしね。
今回、幼馴染に強引に巻き込まれたかたちでレジ荒らしの調査を渋々引き受けさせられて、その男の店に行くと共同経営者の死体が転がっていて...で、その死人の義妹に惚れられるわ、別な探偵の調査員は名ばかりの今風に言えば「別れさせ屋」の女にも誘われるわ、と相変わらずキャノン、ルンペンなのが謎なほどにモテモテである。この「別れさせ屋」の女フランがなかなか意味深なことを言う(ファッションもカラスで尖がってる)。もちろん、このシリーズの眼目は、カートの前妻トニへの、未練たっぷりな思い入れというかトラウマと合体してわけのわかんないコンプレックスになっている愛憎の感情に溺れるさま、なのは言うまでもないんだけど、これを第三者の女が見たとき、 あんたは傷つけられた男。しかも美しい女に傷つけられた男。母親のようにあんたをいたわりたいという自然な本能を別にしても、そこには挑戦してくるものがあるの。女らしい女ならば無視できない挑戦よ(中略)その挑戦っていうのは、恋の焔を消すことができるかどうか(略)あんたにとっては最高のものだった女を忘れさせることができるかどうかってこと。 というあたり、オンナのトラウマ男好きの真相というかホンネ感が半端ない。「あんたがいやがるから、ますます挑戦したくなるのよ」と女にだって征服欲があるわけだよ。まあこの手の小洒落て洞察の効いたネタがあって、しかもそれらがちょいとしたミスディレクションになっているあたりに作者の才気を感じて、ニヤリとするようなタイプの小説だ。こういうの、いわゆる名作の範疇には絶対入らないけど、妙に愛される小説の資格だけは十分すぎる。 |