皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ その他 ] 幽霊殺人 |
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ストルガツキー兄弟 | 出版月: 1974年01月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1974年01月 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | 2017/04/02 22:32 |
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(ネタバレなし~少なくとも具体的な真相も犯人も書きません)
「おれ」こと警察監査官のピーター・グレブスキーは家族を残して、冬山の渓谷「壜の細顎」にあるホテル「山の遭難者」に宿泊。二週間のスキー休暇を楽しむ予定だった。だがそのホテルで、密室状況の殺人と思われる事件が発生。雪崩の影響で平地との連絡も取りにくくなる。さらに同宿の者がもうひとりの自分を見たとか、室内の女性が人形に変わったなどと怪異を訴える。そんな一連の怪事の裏には、意外な真実が隠されていた。 タルコフスキーのSF映画『ストーカー』の原作でも知られる、ソ連時代のロシアの兄弟SF作家アルカジイ&ボリス・ストルガツキーが1970年に母国の雑誌「青年時代」に連載した長編作品。 設定も導入部も後半ギリギリまでの展開も純然たるオカルトミステリ風で、実際に作者コンビはミステリの意匠で読ませ、最後の最後で<読者があっと驚くどんでん返し>を狙ったようである。内容は正にその狙いに沿ったものなのだが、日本では本作が邦訳・収録された叢書のレーベルから、どういう方向のオチか待っているか大方読めてしまう。まあ本書の邦訳(1974年)以前からストルガツキー兄弟といえば日本でも当時のソ連SFの重要作家(の二人)といわれていたのだから、どういった叢書で出ても作者名を意識した時点で半ばアウトではあるが。 訳者の深見弾は本書のあとがきで、日本の読者はあらかじめこの作品の「戸籍」がわかっている、その上でこの物語がどういう形でその戸籍に収まるのか、それを楽しむべし、という主旨の言い方をしているが、これこそ言い得て妙だ。 素直に読むならたしかに<そういう方向>に行くまでの展開も、真相が発覚後の筋立ても、それぞれの味わいがある。 でもまあやっぱり、ポケミスで<ソ連のSF作家が書いた異色の、雪山での謎の怪事件!>とかなんとか言われながら、読みたかったよなあ。 いろいろ複雑な思いを抱きながら、この評点。 |