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[ 法廷・リーガル ] アラバマ物語 別題『ものまね鳥を殺すのは アラバマ物語』 |
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ハーパー・リー | 出版月: 1964年01月 | 平均: 9.00点 | 書評数: 1件 |
暮しの手帖社 1964年01月 |
暮しの手帖社 1984年05月 |
暮しの手帖社 2016年12月 |
早川書房 2023年06月 |
No.1 | 9点 | mini | 2016/12/22 09:58 |
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一昨日20日に早川書房から単行本形式でハーパー・リー「さあ、見張りを立てよ」が刊行された
ポケミスとかの版型じゃないのはこれが狭い意味でのミステリー小説ではないからだろう 「さあ、見張りを立てよ」は内容的には、あの戦後アメリカ文学の最高傑作とも言われる「アラバマ物語」の言わば後日譚なのだが、実は書かれたのは「さあ、見張りを立てよ」の方が先なのである、と言うか短編は別にすると作者が初めて書いた長編小説である 「さあ、見張りを立てよ」は各種新聞雑誌の書評などでは習作に過ぎないとか、これがあの「アラバマ物語」に先立って書かれたとは信じられないとか、封印したままにすべきだったとか、いろいろと書かれていた そこで名前が挙がるのが書かれた当時の編集者、テレサ・フォン・ホホフである ホホフは「さあ、見張りを立てよ」が気に入らず、設定を変えての書き直しを提案したらしいのだが、その2年後に書かれたのが「アラバマ物語」なわけで、著者にはその後に目立った小説が一切ない事を考えても、名作「アラバマ物語」の執筆は名編集者ホホフとの共同作業だったのではとの憶測さえ生む 長らく封印されてきた習作とも言われる「さあ、見張りを立てよ」が公になった事情は知る由もないが、「アラバマ物語」に対する見方が変わる可能性もあるだろう 作者ハーパー・リー氏は今年の2月に亡くなったが、世界的なニュースになり、私もNHKのニュースで採り上げられていたのは覚えている 当然ながら、”「アラバマ物語」の著者”という言い方での肩書が付けられていた その時点で未読ではあったが本は所有していたのでいずれ書評すべきとは思っていたが、今回の新刊のタイミング以外に絶好の機会は無いでしょう さてと、「アラバマ物語」である アメリカではよく中低学年児童の課題図書に使われて、小さいころから親しまれているらしい 日本で言うなら、国語の教科書には必ず載っています的な、要するにそういう話なわけですよ 南部が舞台なだけに極めてアメリカ的、必ずしも中心テーマが世界的に普遍的か?と言ったら一概に言い切れない やはり黒人差別問題というのは日本人には分かり難いしね それでも黒人差別問題以外にもヒューマニズムとして読者に訴えるものは感じられる ただし私はこの小説が小説として上手いとは思えない 翻訳だからではないと思う、おそらく原文もこんなたどたどしさが有るんじゃないかな、少なくともいわゆる名文ではないと思う むしろ素人が書いたような文章だからこその迫力が魅力なのではと思うよ ミステリーとしてはまぁ中心テーマが絡む裁判シーンも有るので一応は法廷ものとしてジャンル投票した しかしそれも他に適切なジャンル候補が無かったからで、過去回想の語りだからと言って歴史ミステリーとも違うしね、むしろ最も適切なジャンルは”その他”なんじゃないかと言う気さえする ところで作中に登場するあだ名がスカウトというお転婆な少女はもちろん著者自身がモデルで、その遊び仲間でディルという小柄で小生意気な少年が登場するのだが、実はこの少年ディルのモデルが作家トルーマン・カポーティらしい 幼い頃の著者ハーパー・リーとカポーティとは近所住まいの幼馴染みだったのである カポーティの代表作の1つ「冷血」の取材旅行にハーパー・リーも助手として同行した事もあるし、カポーティの作中にはリーと思わしき人物も登場するらしいよ |