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[ 本格/新本格 ]
殺人ごっこ
旧題 「県立S高校事件」
左右田謙 出版月: 1961年01月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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東都書房
1961年01月

春陽堂書店
1987年07月

No.2 6点 人並由真 2018/09/16 19:40
(ネタバレなし~途中までと最後は)
 Amazonの高い評価と、本サイトのnukkamさんのレビュー内のコメント「明かされた真相には驚きのどんでん返しが用意されてあります」に気を惹かれて読んでみた。今回は再刊・改題版の春陽文庫の方で読了。

 ミステリアスな導入部、途中のいかにも昭和の通俗作品っぽい男女の情欲や汚職などがからむ人間模様、作者が教師ということもあってかなり緻密に描き込まれた学園内・教師職の就業システム……とやや、ごった煮的な感じだなと思いながらページをめくっていくと、後半から捜査陣側の若手刑事に主人公が交代。清張の一時期の長編風な作りであった。
 それで肝心のサプライズだが、ああ、こう来たか、という感じだった。仕掛けそのものはシンプルとも大技ともいえるものだが、その作為の向こうに劇中人物の強烈なキャラクターが覗くあたりは、かなり好ましい。終盤にニヤニヤ笑いながら己の思惑を語っているのであろう、某登場人物の黒い思考には、ゾッとするものを覚えた。
 全体的にもうひとつ、こなれの悪い作品だけど、狙いをうまく活かしたという意味では成功作だろう。

■以下 少しネタバレ


問題なのは題名だよなあ。旧題も改題の方も、どっちも最後まで読むとかなり大ネタを暗示していることがわかる。実は(中略)ということに、気がつく人はそれぞれの書名だけでピーンと来てしまうのではないか。


■ネタバレ終了

余談1:しかし途中の叙述「こういう女は推理小説を読まないということで、教養の高さを示したがるものである」という文節には爆笑しました。そういうもんなのか(笑)。
余談2:春陽文庫版の239ページ。とある謎の重要人物についての身体的特徴の情報が、いきなり捜査陣の前にしれっと出てきているような……。いつか本書を読むことがあったら、なんとなく覚えておいてください。

No.1 5点 nukkam 2016/11/08 11:24
(ネタバレなしです) 左右田謙(そうだけん)(1922-2005)は本名を角田実といい、あの角田喜久雄と親戚関係の作家です。1950年頃に本名名義で作家デビューし、1961年発表の本格派推理小説である本書(当時は「県立S高校事件」というタイトルでした)から左右田謙名義の作品を発表するようになります。舞台は女子高ですが登場人物はほとんどが大人で青春物語要素は全くありません。校長によって失職に追い込まれたもと教師、謎の人物によって派遣され校長を殺害するよう指示されたにせ教師、そして当の校長とそれぞれが秘密或いは陰謀を胸に収めていることが描写され、やがて悲劇が起こります。後半になると乾刑事による地道な捜査描写となりますが、かなりの秘密が読者にとっては秘密ではないプロットなので読者が推理に参加する気分は味わえません。それでも明かされた真相には驚きのどんでん返しが用意されてあります。


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左右田謙
1988年12月
狂人館の惨劇 大立目家の崩壊
平均:6.00 / 書評数:2
1985年07月
球魂の蹉趺―高校野球殺人事件
平均:5.00 / 書評数:1
1978年04月
疑惑の渦
平均:5.00 / 書評数:1
1961年01月
殺人ごっこ
平均:5.50 / 書評数:2