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[ サスペンス ]
恐怖への明るい道
リチャード・マーティン・スターン 出版月: 1961年01月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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早川書房
1961年01月

No.1 8点 mini 2016/10/17 10:28
* 私的読書テーマ”生誕100周年作家を漁る”、今回は番外編、昨年2015年度の生誕100周年作家を2名ほど落穂拾い
実は昨年後半は私生活的に多忙だったのであまり読書冊数をこなせなかったのも理由なのだけれど、昨年の生誕100周年作家が豊作な年回りだったので拾いきれなかった事情も有るのだよね
そこで補遺ということで、2作ほど遅ればせながら今年に書評しようと思うわけ、今年は昨年より読書時間が取れるのと、何と言っても大物作家が多くて豊作だった昨年に比べると、今年の生誕100周年作家は平年並みで予定していた作家は現在全て読了しているので余裕が出来たわけね、読了はしていても未だ未書評の作品も1冊有るので月内にはアップしたいけど、その前に2冊ほど
本来なら昨年読む予定で今年にずれ込んだ2名を昨年度の拾遺として今年に書評します、その第1弾はリチャード・マーティン・スターン

1959年度のMWA賞新人賞受賞作がリチャード・マーティン・スターン「恐怖への明るい道」である
大体が戦後に創設されたMWA賞の性格として、型にはまったような従来通りのスタイルの作品はまず受賞しないわけですよね、これは方針としてでしょう
黄金時代の作風ばかり求めるような読者は、これを戦後作品の質的低下みたいにすぐ言うけど、それは読者側の保守的な姿勢の方が問題なわけですよ、MWA賞はそうした保守的な作品はそもそも受賞しないのですよね
「恐怖への明るい道」も何となく有りがちな設定の犯罪小説に見えて、案外と類似の作品を思い付かない
ジャンルもさ、形式的に見るなら麻薬組織が背景の”クライムノベル”になっちゃうけど、これは犯罪小説的な感性では書かれていないと思う、私は敢えて意図的に”サスペンス”にジャンル投票した
だってこれ登場人物の心理を描くのが主体だと思うわけ
その心理描写も決して深くはない、むしろ抑制の利いた心理描写だからこそこの作品を魅力的なものにしているとしか思えないですね
これをさ、こってりした心理描写で書いちゃったら単なるメロドラマにしかならないわけ
下手に書くと平凡な犯罪小説にしか成り得ないような題材を用いながら、新人賞受賞作らしい瑞々しい感性と落ち付いた筆致とが一体となって極上の心理サスペンスに昇華している、そんな感じ


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リチャード・マーティン・スターン
1975年01月
そびえたつ地獄
1961年01月
恐怖への明るい道
平均:8.00 / 書評数:1