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[ 本格 ]
ジグザグ
フランス推理小説大賞
ポール・アンドレオータ 出版月: 不明 平均: 6.00点 書評数: 1件

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No.1 6点 人並由真 2016/09/27 15:28
(ネタバレなし)
 「ぼく」ことルッソー化学会社の営業部長の座に就く34歳のピエ-ル・レネ。ピエールは19歳の美少女モデルのルー(ルイーズ・シコー)を彼女にしていたが、仕事の上で出会った広告代理店アルガリック社の美人スタッフ、クリス・カリエと恋仲になる。そのクリスはまだ24歳の若さながら3年前に離婚歴があり、離婚の原因となったのは、クリスがモード写真家の伊達男ジェス・ヴァヤ(現在39歳)に当時よろめいたからだった。やがてルーとは別れ、クリスを伴侶に迎えたピエールだが、そのクリスが今もまだヴァヤと密会しているという情報が彼のもとにもたらされる。しかもヴァヤの現在のモデルとなっているのは、あのルーだった。ピエールはヴァヤのもとを訪ねるが、案の定、口論となり、互いに暴力をふるってその場を去った。しかしその直後、そのヴァヤが自宅で刺殺される。事件は思わぬ方向へ向かっていく。

 1970年のフランスミステリで、同年度のフランス推理小説大賞受賞作品。日本では1972年3月にポケミスで翻訳刊行された(1172番)。原書は当時、セイヤーズ、テイ、アシモフ、C・アームストロング、S・パーマー、シモンズ、ハーバート・ブリーンなど欧米の錚々たる作家を揃えた仏国・ジェイオール社のミステリ叢書「コレクションP・J」の一冊として刊行。当時の同叢書での初の自国作品だったという。
 物語は二部構成で、前半がピエールを主人公にした「クリス夫人」の章、後半がピエールの友人の青年弁護士アベル・ジャカールを主体(一人称「わたし」)とする法廷ミステリ「ルー嬢」の章、という仕様。少しだけ入り組んだ四角関係の緊張感を語るとともに、ヴァヤを殺害した真犯人は誰かというフーダニットの興味、さらに次第に浮かび上がってくるある種の違和感で、読者を終盤まで引っ張る。その意味ではサスペンス、法廷ものとの分類に迷う作品であった。

 ミステリとしてはフランス作品らしい独特の技巧とサスペンス感にあふれた佳作~秀作。登場人物が決して多くないので犯人の名をなんとなく挙げることは可能かもしれないが、事件の真相そのものはなかなかひねってあり面白い。現代の日本の新本格あたりにこういうのが時たま、一冊くらいまぎれこんでいそうな感じもある。


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平均:6.00 / 書評数:1