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[ 社会派 ]
果つる底なき
池井戸潤 出版月: 1998年09月 平均: 5.75点 書評数: 4件

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講談社
1998年09月

講談社
2001年06月

No.4 7点 HORNET 2018/01/06 17:36
 超売れっ子の原点を見るような気がして嬉しい(といっても、売れ作品はミステリじゃないのでほとんど読んでないが…)。そしてそれがミステリであること、江戸川乱歩賞受賞作であることがなおニンマリ。現在の池井戸作品ファンに、「彼、乱歩賞作家で、今では乱歩賞の審査員もやってるミステリ作家なんだよ」と教えると結構驚かれる。デビュー作であるからこの人なりに多少の拙さはあるのかもしれないが、私に言わせれば最初からこのクオリティは大したもの、だと思う。
 銀行の仕組みや、「手形」とやらの仕組みに明るくないので、そもそもの事件の構造を理解するのに労を要したのがやや難だったが、真相を探ろうとする主人公に次第に魔の手が伸びていく展開や、それでも独力で真相に迫ろうとする過程には力があり、読み応えがあった。
 典型的な社会派ミステリのような気がして、これが乱歩賞を受賞したということに意外性を感じた(作品のレベルとして足りないという意味ではなく、ジャンルの意味で)。

No.3 4点 風桜青紫 2016/01/27 00:02
いかにも乱歩賞の受章を狙って書いたような作品。銀行の構造についての説明がだらだら書き流されているものの、作者の経歴アピールのために入れられたような感じがあり、読むのがダルい。池井戸の著名な作品はどれも抜群のリーダビリディを持っているんだけども、デビュー作のこれはなんというか退屈な話運びだった。文庫解説では、「銀行ハードボイルド」など表現されているが、話の筋や最後の格闘シーンが『大いなる眠り』とか『ゴッドウルフの行方』にちょっと似てると思っただけで、ハードボイルドとしてもそこまで楽しめる作りとは感じなかった。まあ、良くも悪くもデビュー作といったところか。

No.2 6点 2013/01/07 11:01
銀行マンの一人称で描いた社会派ハードボイルド作品。
主人公は大手・二都銀行の融資課の課長代理・伊木。同僚の変死事件の謎を、銀行内の異端児で一匹狼的な存在である伊木が銀行の内幕を暴きながら解明してゆく。もちろん、伊木自身はハードボイルド小説の主人公らしく、身の危険にも曝される。

読み出して数十ページぐらいは、銀行が舞台なのに経済小説や社会派ミステリーを読んでいる感じがまったくせず、その違和感に、疑問を抱くよりも、ただただ上手いなぁと感心していました。従来の銀行マンのイメージを変えて登場させたところは安っぽい発想のようにも感じられましたが、ついつい乗せられてしまいました。
でも、銀行出身の作家としてぜひ描きたかったのか、じょじょに社会派要素が頭をもたげてきます。そうなると、ハードボイルドはおまけみたいに思えて、不釣合い、不自然な印象が強くなってきます。
それに謎解きミステリーとしても安直な気がしました。せっかく伏線として使えそうな人物、事象を描写しているのにもったいないように思えました。殺人手段も面白いのにねぇ。

ということで、ミステリーとしてはボーダーぎりぎり。アイデアはいいので、ちょっと甘めだけど点数はこんなところでしょう。

No.1 6点 E-BANKER 2009/08/07 21:52
第44回江戸川乱歩賞受賞作。
最近、売れっ子作家へ一歩ずつ近づいている作者の長篇デビュー作です。
~「これは貸しだからな」という謎の言葉を残して、債権回収担当の銀行員が死んだ。死因はアレルギー性ショック。彼の妻は、かつて主人公の恋人だった。死者のため、そして何かを失いかけている自分のため、ただ1人銀行の暗闇に立ち向かう~ という粗筋。
まぁ、デビュー作ですから、文章の拙さや書き込み不足という印象はどうしても感じました。
プロットというかストーリー展開もちょっとご都合主義が目に付いてしまう・・・
ただ、この分野(銀行を主な舞台としたミステリー)については、今や作者の独壇場という気がしますし、他の作家が書く経済絡みのミステリーとは一味違うレベルの高さは感じます。(さすがに元銀行員ですね)
ミステリー的には真犯人がちょっと類型的で、サプライズ感には欠けますが、まぁ及第点というところでしょうか。
この賞の受賞作らしい作品だとは思います。
(「銀行」=お金。「お金」→「人間のエゴや欲望」ということで、ミステリーの舞台として「銀行」は馴染み易いんですねぇ・・・)


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